古賀稔彦さんの訃報を聞きショックというより、まず頭が混乱した。約1年前の昨年4月、電話インタビューで元気な声を聞いていたからだ。

 1990年の全日本選手権を振り返る企画で、当時の重量級絶対王者だった小川氏との死闘、またお互いの関係性などを、時折冗談を交えながら話していただいた。声には張りもあり、その時は病気などみじんも感じられなかった。

 柔道の試合会場でも何度かお話を聞かせていただく機会があったが、印象的なのは必ず笑顔であるところ。記者が初めてあいさつをしたのは、古賀さんが自販機で缶コーヒーを買っているところという、ぶしつけな状況だったのだが、その際も笑顔だった。

 2019年11月のグランドスラム大阪大会では、当時教え子だった女子78キロ超級の素根輝(20)が優勝して五輪切符を手にした。喜びを口にする一方、決勝で敗れ、この時には内定を逃した女子52㌔級の阿部詩(20=日体大)にエールを送っていたのが印象深い。

「詩というか女子の場合、20歳前後がグッと上がってくる。プラス世界選手権は取っているが、五輪は取ってないんで、貪欲になれる。これからの1年さらに成長して、今年以上の状況はつくれるかなとは思いますね」

 年が明けて20年2月、詩も五輪内定を獲得した。古賀さんの期待を背負った2人の金メダル獲得を願いつつ、心からご冥福をお祈りします。

(柔道担当・高橋壮之)