柔道の総本山、講道館(東京・文京区)が国際大会での技の“名称統一”を国際柔道連盟(IJF)から依頼されていたことが22日、本紙の取材で分かった。これまで別々に行っていた技名称の認定が一元化されることになり、講道館の国際的影響力は大きく増すことになりそうだ。

 これまで柔道の決まり技は講道館とIJFで、必ずしも一致していなかった。講道館で認定している技名称は投げ技(手技、腰技、足技、真捨身技、横捨身技)が「67」、固め技(抑え込み技、絞め技、関節技)が「29」の合計「96」。一方、1995年に発表されたIJFの技名称は数字上は投げ技が講道館より1つ少ないだけだが、数種類の独自技を認定している。例えば、その1つの「帯取り返し」は講道館では形状によって「肩車」や「浮き落とし」「引き込み返し」に分類される。同じ技でも国際大会と国内大会で名称の相違が生じ、解釈の問題も含め、しばしば議論の対象になってきた。

 近年では足取り禁止など国際ルールの変更もあり、技の種類が多様化。最新の情報では競技の普及は世界202か国に上り、IJF主催の国際試合でも新しい技や記録として判定できないあいまいな技が増えている。

 そこで今年に入り、混乱を嫌ったIJFのマリウス・ビゼール会長(56)が講道館に対し、検証が必要な場合の「技の認定」を一任してきたという。上村春樹館長(63)は「技名称はすべて共用にしたほうがいい。講道館でつけたほうがすっきりする」と前向きな姿勢を示した。

 講道館には伝統的な技研究部会(通称技研)と呼ばれる組織が存在し、長年にわたり、技の命名や考察を行ってきた。しかし、IJFの打診を受け、技研を母体に国際的なジャッジに対応する委員会を新設。「エキスパートを2人用意した」(上村館長)。今後はIJFから試合中にリアルタイムで送られる“不明技”の映像を高度な専門知識を持つ委員が講道館の技名称にのっとって分析し、即座に回答するという流れができ上がることになる。新技の場合は「英語でつけるわけにはいかない」(上村館長)と命名の役割も担う。

 改革派で知られるビゼール会長が柔道の根幹部分を講道館に一元化する意思表示をしたことは、原点回帰の表れと言える。講道館の権威が世界的に高まることは必至で、一部には「ビゼールは講道館を神格化しようとしているのではないか」(関係者)との声も上がる。

 国際舞台では「JUDO」と表示されるなど、何かと立場の弱かった柔道母国の威信回復にも期待が集まる。