全日本柔道連盟の金野潤強化委員長(53)が10日、リモート取材に応じ、グランドスラム・タシケント大会(ウズベキスタン)から帰国した日本選手団の現状に言及。同大会の女子52キロ級で優勝した阿部詩(20=日体大)をはじめ女子4選手が帰国後に〝聖地〟講道館(東京・文京区)に寝泊まりして稽古に励んでいることを明かした。

 絶好の隔離施設が見つかった。現在、新型コロナウイルス禍で海外から帰国後は14日間の厳しい隔離期間が強いられている。強化活動(練習や大会参加など)が可能となる特例措置「アスリートトラック」が停止しているためだ。

 そんな中、タシケント大会に遠征中の全柔連に吉報が届いた。日本オリンピック委員会(JOC)、スポーツ庁から各国内競技連盟(NF)に対して提案された措置を基に〝ウルトラC〟の隔離案が打ち出された。

「選手たちに少しでもいい状況を与えたいと模索する中で、こういう新しいシステムがあるという連絡が渡航中の私たちに入った。事務局や監督たちと協議して使わせてもらうことにした」(金野委員長)

 条件として「ホテルのワンフロア貸し切り」「他者と一切の接触・交流がない」「PCRを複数回受ける」など多岐にわたる。金野委員長は「ホテルの場合はフロア全部を借りなきゃいけない。NFがすべて予算をまかなうことは現実的に不可能。話をもらった時は諦めた」と難色を示したが、そんな中で低予算の講道館が手を差し伸べてくれたという。

「講道館は3階がすべて宿泊フロアになっていて、そこを全部貸していただくことになった。ワンフロアを貸し切って、しかも外部と交流なく畳のエリアにいけるシステムは非常に限られている。講道館のご理解をいただいて練習できる環境が確保できました。国の基準を厳粛に守りながら練習をしてやっていきたい。講道館があって助かったと思っています」

 今回の宿泊希望者は女子4選手に加えて監督、コーチら計7人。全日本選抜体重別選手権(4月3~4日、福岡国際センター)に出場する選手にとっては絶好の環境だ。稽古の際に道場に降り、外部者と接触しないように3階に戻る生活。食事は地下からお弁当を取り寄せるという。

 その一方で、細かい外出ルールについて金野委員長は「どこを見ても書いていないんですよ。基本的には外出はダメという認識ですが、例えば急病になったり、食べ物や飲み物が全くなくなった状態でも我慢するのか。健康に害を及ぼすようなことになった場合とか…どこまでが隔離なのか、そこは非常に難しい問題です」と困惑するが、練習場所に苦慮する代表選手にとって施設があるだけでありがたい話だろう。

 東京五輪へ向けて練習場所に苦慮する代表選手にとって柔道の聖地が〝救世主〟になるかもしれない。