<ロンドン五輪>金メダル量産を期待された柔道は女子が金1、銀1、銅1と低調、男子は銀2、銅2と史上初めて金メダル「0」の大惨敗となった。
日本オリンピック委員会(JOC)理事を務める山口香氏は、ニッポン柔道のかつてない危機に辛らつだ。
「『日本のお家芸だから強い』と思われている節がありますが、もうその時代は終わったということです。金メダル1個というのは偶然ではない。負けるべくして負けているんですよ。日本は弱くなったという現実をまずは受け止めるべきです」
今回、男女に共通して言えることは「勝つための戦術」に欠けていたことだった。敗戦の弁を述べる選手たちは口癖のように「組ませてもらえなかった」「自分の柔道をさせてもらえなかった」と言う。しかし、外国人選手の簡単に組まない柔道は今に始まったことではない。欧州選手はすくい投げや隅返しを多用するが、欧州ではこの“変則柔道”がもはやスタンダードになっている。日本人選手は対応できないままで、これを補うだけの技術、戦術がない。要は単に「弱かった」のだ。
「外国人選手の方がよほどわかっている。技がなければ、体力勝負したり、がむしゃらにいったり、他の強みを生かそうとする。しかし、日本人選手は相変わらず『一本取る柔道』にばかりこだわっている。それが勝つことにつながっていればいいが、つながってないんです」(山口氏)
この日の杉本の決勝こそそれを象徴していた。相手と組んでも仕掛けようとしない。返されることを恐れ、勝負にいかないため劣勢に立たされる。逆に唯一金メダルを取った女子57キロ級の松本薫(24=フォーリーフジャパン)は一本を取れる技がないが、闘争心むき出しで前に出て技のキレを補った。
では、ニッポン柔道復活にはどうすればいいのか。山口氏は大胆提言。
「外国人コーチの招聘も必要だと思います。ロシアはソ連時代金メダルを量産していましたが、ソ連崩壊後、北京五輪まで金メダルがゼロでした。そこでイタリア人コーチを招いて強化したんです。そして今回ロシアは金メダル3個も取りました。彼らはプライドを捨てたんです」
柔道本家の日本に外国人コーチ――。これは強烈なアレルギー反応が起こりそうだが、大ナタをふるわない限り、4年後も同じ失敗を繰り返すだろう。「日本が外国に学ぶ日が来た」という山口氏の言葉は重い。ニッポン柔道が今、岐路に立たされている。
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