和解の裏にあった“幻の対決”とは――。柔道の国際大会「ワールドマスターズ」(11~13日、カタール・ドーハ)に出場した東京五輪男子90キロ級代表の向翔一郎(24)は昨年6月、男子66キロ級の丸山城志郎(27=ミキハウス)の父・顕志氏(55)との間でひと悶着あったことは記憶に新しい。その後、両者は電話で直接話し、わだかまりは解消されたが、本紙直撃に応じた顕志氏は、その過程でユニークな計画を提案していたことを明かした。

 ファンならずとも注目を集めた昨年12月の男子66キロ級東京五輪代表決定戦で丸山は阿部一二三(23=パーク24)に死闘の末に敗れ、代表の座を逃した。試合前に「負けるイメージしかない」と息子の敗戦を“予言”していた顕志氏は「分かっていました。阿部君のほうがいい目をしていた」と淡々と振り返った。

 ただ新型コロナウイルスの“感染爆発”による緊急事態宣言再発令下でのマスターズ派遣については「(100キロ超級の)原沢(久喜=28、百五銀行)選手とか、向選手。重要な選手が派遣されてるということでしょうけど、あれ?と思って、びっくりした」と疑問を投げかけた。

 そんな顕志氏は昨年、向が喫煙する姿をユーチューブに投稿したことに対し、SNS上で苦言を呈した。すると、向は同氏を中傷するような動画を投稿したことで騒動に発展。しかし同氏は本人と電話で話し、逆にエールを送るなど大人の幕引きを図ったが、実際はどのようなやりとりがあったのか。

 顕志氏によると「最初に『親近感、わかないから翔一郎って呼ばしてもらうぞ』って言って『こういうことを世間に知らしめるのは翔一郎のイメージが良くないから、エンターテインメントにしようと』って言ったんです」と乱取りによる対決を提案したという。

 さらに「どこか道場ある?って聞いたら『(向の母校)日大の道場でいいですか?』って言うから、よし、やろうって。その代わり『最初の1分か2分は俺がいいところ見せるような映像撮ってくれよ』って言ったら、『分かりました!』って言ってたんですよ」と仰天告白だ。

 なんと2人の“乱取り対決”を向のユーチューブチャンネルにアップする計画だったのだが、当然関係各所からストップがかかり、“世紀の対決”はお蔵入りに。柔道界の異端児と言われる向と、バルセロナ五輪男子65キロ級代表のガチバトルが実現していれば、大きな話題となっていたはずだが…。

 最後に世界的なコロナ禍でますます不透明になった東京五輪開催については「日本が、こんな状況で海外の選手だって来たくないでしょ。半年ちょっとで終息は厳しい。ただ選手は目の前にある、やるべきことをやるだけ。開催を信じてやってほしい」。オリンピアンの先輩としてアドバイスを送った。