夢舞台で金メダルを取るカギは…。全日本柔道連盟の強化委員会(27日)は、女子52キロ級で世界選手権2連覇中の阿部詩(19=日体大)ら12人を新たに東京五輪代表に選出した。世界の舞台で力を見せつけている次代のヒロインは「誰よりも強い姿を見せたい」と意気込んだ。五輪の舞台は未知の世界とあって優勝には万全の準備が必要となるが、恩師はさらなる進化に太鼓判を押している。

 待望の五輪代表に詩は「内定が決まってホッとしている」と笑顔で対応。発表前は、緊張はせずに自宅で待っていたというが「改めて代表という覚悟が決まった」と気を引き締めた。

 昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会では決勝でアマンディーヌ・ブシャール(24=フランス)に敗れて代表内定を逃し涙にくれた。しかし、21日のGSデュッセルドルフ大会決勝ではブシャールを相手に雪辱を果たして優勝。文句なしの代表入りを決めた。

 難敵相手にしっかりとリベンジを果たしたわけだが、この“修正能力”について、詩を高校時代に指導した兵庫・夙川高柔道部の松本純一郎監督(51)は「(GS)大阪(大会)では力の差を感じて怖がっていた。だが自分の失敗をきちっとコントロールして本来の柔道に戻った結果(GSデュッセルドルフ大会では)あれだけのワンサイドゲームになった」と指摘した。

 では、五輪でも頂点に上り詰められるのか。松本監督は「(五輪は)一種異様な世界。自国開催、ましてや競技発祥の地ですから、いやが上にも期待は高まる。まだ19歳の女の子が、その環境に適応できるか。そこだけの問題」。4年に一度の祭典で盛り上がる周囲の熱気で予想以上のプレッシャーを受けかねないため、ポイントになるのは“不動心”だという。

 実際に五輪内定がかかったGS大阪大会では「別人のようだった」という松本監督も「(GSデュッセルドルフ大会では)久しぶりに大腰も出ていた。強気じゃないとできない技」と詩の原点回帰に太鼓判。さらに進化して臨む五輪についても「あの子は笑顔が一番似合う。五輪でもはじける笑顔を見せてほしい」とエールを送った。

 男子66キロ級で代表争いを続ける兄の阿部一二三(22=日体大)に対して詩は「信じて待つだけ。お兄ちゃんなら決めてくれると信じている」と話したが、今夏の五輪本番では重圧を乗り越えてきょうだいでのアベックVを目指す。