柔道ニッポン康生監督の涙に異論 元暴走王・小川氏「ある意味大失態」強烈ダメ出しのワケ

2020年02月28日 16時40分

会見に臨んだ井上監督は言葉を詰まらせ、涙を見せた

 柔道男子の井上康生監督(41)が見せた涙が、話題を呼んでいる。全日本柔道連盟は27日の強化委員会で男子73キロ級で2016年リオ五輪金メダルの大野将平(28=旭化成)、女子52キロ級で世界選手権2連覇中の阿部詩(19=日体大)ら12人を新たに東京五輪代表に選出したが、その発表会見で井上監督は選ばれなかった選手を思い、大粒の涙を流したのだ。前代未聞の事態にネット上では感動の声が多数を占める一方で、“待った”をかける意見も…。「まさかの涙」の意味を探った。

 まさに異例の光景だった。井上監督は会見で選手に対する期待を聞かれると、60キロ級の永山竜樹(23=了徳寺大職)ら落選者の名前を挙げながら声を詰まらせた。しばらく言葉が出てこない状況に、会場内がざわつき始める中で「ぎりぎりで落ちた選手の顔しか浮かばない。彼らはすべてをかけ、ここまで戦ってくれた」と声を震わせながら涙をぬぐった。

 現役時代は2000年シドニー五輪の100キロ級をオール一本勝ちの離れ業で制した柔道界きってのスター選手。指導者としても、リオ五輪で男子代表が金2個を含む全階級メダル獲得を達成するなど実績を残してきたが、もともと情に厚い人柄だ。実際にメダル量産のリオ五輪でも、人目をはばからず涙を見せている。再びの男泣きに対し、ネット上では「その涙で落選した選手は救われるし、選ばれた選手は力に変わる」「選手思いの良い監督だと思います」「こんな監督のもとで育てられた選手は幸せ」と賛辞の嵐が吹き荒れた。選手に対し「あの子たち」と表現する井上監督のもと、日本代表として一体感が増し一丸で五輪に向かう態勢が整ったと、ファンには映ったのだろう。

 ただ、これに真っ向から異を唱えるのが、1992年バルセロナ五輪95キロ超級銀メダルの“元暴走王”小川直也氏(51)だ。井上監督について「気持ちは分からないこともないよ。監督なんだけど、自分が(代表選手を)決めるわけじゃない。だから一歩引いた形で見ちゃったんだろうな」と、強化委員会の投票で代表が決まるシステムに、涙の原因があると分析する。

 だが続けて「選ぶ側は毅然とした態度でいないと」とピシャリ。井上監督は会見で涙したことを「こんな場所で一番やってはいけない。申し訳ありません」と謝罪したが、“元暴走王”は「謝るならさ…発表するのは分かってるんだから。いくら天下の井上康生であっても、ある意味大失態。一評論家として厳しい目で見ると、泣いちゃダメでしょ」と言い切った。

 ネット上での「落ちた選手が救われる」という意見に対しても「よくないと思うよ。選ばれない時点で、もうふてくされてるんだからさ。会社だって誰かが脱落して、一人だけ出世するわけでしょ」と元JRA職員らしく指摘した。

 確かに企業などで昇進しなかった社員に対して涙を見せる上司がいるわけがない。小川氏は「今の選手は(選手選考の)事情も全部知ってる。だから監督として会見では毅然として、泣くときは陰で泣いてほしかった」と言葉を結んだ。

 もっとも、そうした外野の声をよそに井上監督の頭にあるのは、本番で結果を残すことだけ。「選手たちが力を最大限に発揮できる環境づくりをしなければならない。我々はそこに全力を尽くすのみ」と力強く語った。東京五輪では金メダルを量産し、今度は歓喜の涙を流すしかない。