【柔道】東京五輪「金メダル100%」を左右する意外なキーマン

2019年09月03日 11時00分

3連覇を達成した日本チーム。安倍晋三首相(手前左)、全日本柔道連盟・山下泰裕会長(右端)も祝福

 金メダルの確率は「80%」――。東京五輪プレ大会の柔道世界選手権最終日(1日、東京・日本武道館)、男女混合団体戦が行われ、日本が決勝で前回大会2位のフランスを4―2で破り、3連覇を達成した。プレ五輪の最終日に「絶対金メダル」を課された新種目で有終の美を飾り、本番でも同じ結果を期待したいところ。日本の選手層の厚さは世界でも類を見ないほどで隙はなさそうだが、意外なキーマンが浮上。現在の柔道界で“最重要人物”が日本の前に立ちはだかりそうだ。

 来年の本番と同じ舞台の聖地・日本武道館が揺れた。東京五輪で初めて実施される新種目、男女混合団体戦の決勝で“柔道大国”フランスを破っての3連覇だ。男子73キロ級世界王者で日本の絶対エース、大野将平(27=旭化成)は必殺の内股で合わせ技一本勝ち。「チームのみんなと喜べるのが団体戦の一番の良さ。大歓声を聞きたかった」と珍しく相好を崩した。

 男女混合団体戦は男女3人ずつの6人がチームになり、延長ありの“マストシステム”で争われる。出場階級は決められており、男子は73キロ以下、90キロ以下、90キロ超、女子は57キロ以下、70キロ以下、70キロ超となる。今大会では団体戦代表選手として女子70キロ級の大野陽子(29=コマツ)ら5人の男女選手が選出されたが、本番の五輪では「団体戦代表」という概念はない。個人戦出場の選手がそのまま団体戦にも出場することになるため、誰を出すかという選択も重要になってくる。

 チームをどう決定するかについて、全日本柔道連盟の金野潤強化委員長(52)は「基本的には(階級の範囲で)重いほうの選手から選んでいく形になると思うが、当日のコンディションによっても変わってくるので、それは男女監督と話し合った上で決めたい」と話した。

 選手を6人集めることができる国ならどこでも出場可能だが、女子48キロ級覇者のダリア・ビロディド(18)を擁するウクライナや、同57キロ級女王の出口クリスタ(23)がいるカナダは重量級の層が薄く、出場の可能性は低い。各階級で金メダルを目指す選手が揃う日本には絶対的に有利なルールだ。

 では来年の五輪でも金メダル間違いなしかというと、そう簡単ではない。2大会連続団体2位で、個人戦でも女子3階級で金メダルを獲得したフランスが、やはり最大のライバルになる。

 女子78キロ級覇者のマドレーヌ・マロンガ(25)は「強い選手がたくさんいる中でのトレーニングは過酷だが、みんな和気あいあいとしていて仲がいい。そのことも今回の結果にプラスになった」とチームの雰囲気の良さを強調。来年の本番に向け、さらに状態を上げてくるのは必至だ。

 対する日本はどうか。混合団体戦の五輪種目採用が決まった2017年、男女選手間の意思統一を図る「チームビルディング」の講習を始めた。今年6月には2回目が行われたが、その際も選手の間から「普段はあまり話さないので良かった」と意外な意見が出る状態。クラブチーム中心のフランスと違い、出身大学を拠点に練習する日本では、男女一緒に稽古するケースはあまりない。もちろん代表争いもシ烈なため、なかなか「チーム一丸」とはいかないのが実情だ。

 さらに忘れてはならないのは“あの男”だ。今大会のフランスには、男子100キロ超級で五輪2連覇のテディ・リネール(30)が不在。バルセロナ五輪男子95キロ超級銀メダルの“元暴走王”小川直也氏(51)は「東京の次はパリ五輪だし、新種目の初代王者になるチャンス。リネールは団体戦にも出てくるだろう」と指摘した上で「キーマンも何も、世界選手権で10連覇していて、現在の柔道界に彼以上の選手はいない。日本の金メダル確率は100%と言いたいところだけれど、彼が出てくれば確実に2割下がる。だから80%だね」と分析した。

 実際、リネールは今大会男子100キロ超級2位の原沢久喜(27=百五銀行)をリオ五輪決勝、今年7月のグランプリ・モントリオールで連破。ある意味、「1勝」を確実視される存在が控えている。日本は今回ですら薄氷の勝利。世界最強男を加えた上にチーム状態も上げてくるであろうフランス対策は急務と言える。

 ニッポン柔道は新たな歴史を刻めるのか。柔道界の覇権争いにもつながる大一番になりそうだ。

【3連覇の立役者は急きょ出場の浜田】決勝でフランスを撃破して3連覇を達成した立役者は、女子78キロ級銀メダルの浜田尚里(28=自衛隊)だ。浜田は、団体戦70キロ超に出場予定だった78キロ超級金メダルの素根輝(19=環太平洋大)と同級銅メダルの朝比奈沙羅(22=パーク24)の2人がコンディション不良になったため急きょ出場。「昨日の段階では出ると思っていなかった」と話しながらも「今朝、電話が来た時点で出場すると思った。すぐに気持ちと体を準備した」と動じなかった。フランスとの決勝では、78キロ級決勝で完敗を喫した難敵マロンガと再戦。「チャンスは一回しかない」と得意の寝技に持ち込み、きっちり押さえ込んで日本を3連覇に導いた。

 女子70キロ級で3連覇を逃した新井千鶴(25=三井住友海上)も、同級金メダルのマリエーブ・ガイー(22)に一本勝ち。日本女子は個人戦でフランス勢に押されていたが、最後に意地を見せた。来年の東京五輪につなげたいところだ。