柔道の世界選手権第2日(26日、東京・日本武道館)、男子66キロ級で丸山城志郎(26=ミキハウス)が、3連覇を狙う阿部一二三(22=日体大)を準決勝で撃破。そのままの勢いで決勝でも快勝して初出場優勝を飾った。スター街道をひた走る阿部の陰に隠れてきたが、“怪物”相手にこれで3連勝。代表選考に大きな意味を持つ東京五輪プレ大会で、風向きを完全に変えた。大舞台でも見事に勝ち切った苦労人の意外な素顔とは――。

 令和に入って初めての宿命のライバル対決。手の内を知り尽くした2人の戦いは過去5戦中、4戦がゴールデンスコア方式の延長戦に入ってからの決着だったが、今回もまた7分を超える大熱戦となった。

 試合序盤、丸山は左手がつるアクシデントで、思うようにつり手が引けなくなる。さらにその直後には、右ヒザを痛めて苦痛に顔をゆがめた。阿部に向かっていく際も足を引きずるような様子を見せ、明らかに防戦一方。指導も先に2つ取られて万事休すかと思いきや、ここから驚異的な粘りを見せた。

 阿部の猛攻を防ぎきり、隙あらば母校・天理大の穴井隆将監督(35)をして「日本刀のような切れ味」と言わしめる内股を仕掛けていく。延長戦でも痛がるそぶりを全く見せない丸山は指導を奪い返すと7分過ぎ、捨て身技の浮き腰を仕掛けて技ありで勝利を奪っ
た。

 丸山は「いろんな思いがあったので、うれしい気持ちでいっぱい。(世界王者になるまで)普通の選手よりも時間がかかっているが、東京五輪で金メダルを取ることが最大の目標なので、明日からは気持ちを切り替えたい」と涙ぐみながら語った。

 話す口調は普段から物静か。練習でもふざけることなど一切なく、黙々と自分を追い込む。丸山といえば誰もが思い描くのは、そんなクールなイメージだ。しかし穴井監督は「皆さんそうおっしゃいますけど、普通のいい子ですよ。うちの子供もすごくかわいがってくれますし。子供たちは大野(将平)と丸山の大ファンです」と明かす。意外にも子供好きの一面もあるという。

 別の関係者も「実際はクールってことはない。柔道家によくいる、いいヤツ」。昨秋には美人妻もゲットしており、アスリート的な考えでがちがちに凝り固まっているわけではなさそうだ。

 丸山も「まずは(勝てば五輪がほぼ決まる)11月のグランドスラム大阪大会で勝ち切ること。今年が勝負の年なので、それに向けて頑張っていきたい」ときっぱり。これからのブレーク次第でまた新たな一面を見ることができるかもしれない。