授業前後の「おふざけ柔道」が危険

2012年03月30日 10時29分

【柔道関係者が本音で明かす 是か非か 中学校武道必修化(2)】
 中学校の武道必修化について現場の柔道指導者はどう考えているのだろうか。一連の報道からは柔道の危険性ばかりが強調され過ぎているという声も聞こえてくる。そこで、実際に中学生を指導し、柔道教育の専門家である筑波大学大学院の岡田弘隆准教授(45=筑波大柔道部総監督、バルセロナ五輪銅メダル)に問題点と対策を聞いた。

——武道の必修化についてどう受け止めているか

岡田:もともと必修化すべきものだと考えていました。

——というと

岡田:ケガのことばかりが報道されていますが、柔道をやることのメリットの方が多いからです。例えば、受け身をマスターできれば日常生活や他のスポーツで転倒したときに、とっさに受け身をとってケガを防ぐことができます。また、技ができるようになる喜びや、攻防の中で勝ったときのうれしさ、負けたときの悔しさを味わわせることもできます。もちろん、体力の向上につながりますし、日本人全員が礼法や、日本の伝統的な運動文化に触れられることにもなります。

——ただ、死亡事故、後遺症を伴う事故が柔道の練習中に起こっており、必修化を不安がる保護者も多い

岡田:まず区別して考えなければならないのは、授業で教える柔道と部活動の柔道は違うということですね。重大事故は部活動で起こっており、こちらは本当に改善する必要がある。指導者に対する安全指導を徹底しなければいけません。しかし、授業で教える柔道は、一定の条件下であれば重大事故につながることは起こりません。これは断言できます。

——具体的に言えば

岡田:例えば、投げ技は投げ込みのみ全員にやらせ、乱取りはレベルに達した者のみ行わせる、受け身と寝技(絞め技、関節技は禁止)の練習を中心に授業を組み立てるなど、慎重に段階を踏んだ指導を行えば全く問題ありません。どうしてもできない子は別メニューをやらせればいいのです。

——柔道未経験の体育教師が教えられるのかという議論について

岡田:体育教師は元競技者じゃなくてもバレーボールも教えれば陸上や体操も教えますよね? 柔道も同じです。全くの柔道未経験者では無理ですが、体育を専門に学んだ体育教師が柔道の講習を受ければ何ら問題はありません。実際、筑波大学の学生には2日間、2時間ずつの計4時間で中学生に教えられるレベルには到達させています。実技で柔道を選択した学生は20回(75分)の授業で全員が初段レベルには到達し、ほとんどの学生が実際に初段を受験して合格しています。それでも不安な教師は町道場の先生や経験者、柔道部の生徒を有効に活用することも効果的です。

——では、今回の問題点とは

岡田:最も注意しなければならないことは、技ができるようになって、教師の目の届かない授業前や後に、ふざけてかけ合うことですね。そこで事故が起こる可能性はあります。柔道の授業中以外は絶対に柔道の技を使ってはいけないということを徹底して指導しなければなりません。それができれば、そもそも柔道は教育を目的としてつくられたものですから、自分を磨くのに適したスポーツだと言えます。

☆おかだ・ひろたか=1967年2月22日生まれ。岐阜県出身。小学5年生から柔道を始め、87年エッセン大会78キロ級、91年バルセロナ大会86キロ級を制し世界選手権で2階級制覇を達成。92年バルセロナ五輪では86キロ級で銅メダル。94年に引退後は筑波大監督として後進を指導。2005年、地域スポーツの普及を目的とした「つくばユナイテッド柔道」を立ち上げる。現在、幼児、小学生、中学生約120人が登録。練習日には70〜80人が汗を流している。国際柔道連盟(IJF)アスリート委員会委員長。

(※続く)