阿部一二三 岐路に立たされている「常に投げ」狙うスタイルに

2019年04月08日 16時30分

阿部はテーピングを施し、試合に臨んだ

 東京五輪期待の金メダル候補に緊急事態発生だ。柔道の全日本選抜体重別選手権(7日、福岡国際センター)の男子66キロ級決勝で世界選手権2連覇の阿部一二三(21=日体大)が丸山城志郎(25=ミキハウス)に敗れて準優勝。世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)の代表入りは果たしたが、“課題”を克服できず今後に不安を残した。

 まさに柔道史に残る大死闘だった。互いを知り尽くす2人の戦いは、実に13分23秒という長いものとなった。積極的に前に出た阿部は丸山から指導2つを奪い、あと一歩のところまで追い詰めたが、決め切れず延長に突入。一進一退の攻防から、昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会と同じ“奇襲技”のともえ投げで技ありを奪われて決着し、阿部は「投げにいく自分のスタイルでいくしかないと思っていた。気持ちの部分であと一歩足りなかったのが現実。受け止めて見直さないといけない」と唇をかみ締めた。

 2月のGSパリ大会では初戦敗退の不覚を喫した。これに関して日体大で阿部を指導する田辺勝監督(46)は「あの時は年明けで練習が甘かった。今回はバッチリ」と試合前に語っていたが、まさかの大会3連敗だ。阿部は初戦の1回戦で左脇腹を痛めるアクシデントがあったことも大きなハンディになった。ある指導者が「(阿部の)準決勝の動きがものすごく悪かった。あんなに下がるのは初めて見た。下がると(体を)ぶつけているようでも、受け身になる」と指摘したように、気になるのは阿部のケガの多さだ。

 本人は今回のケガについて影響がなかったことを強調したが、GS大阪大会で丸山に敗れた際も右手首を痛めていた。どんな体勢からでも投げにいく阿部の柔道スタイルは見ている者にとっては魅力的。だが、かねて本紙でも報じてきた通り、それが原因でケガにつながっているとすれば元も子もない。田辺監督は「彼の強みは肩の柔らかさ。普通は肩が前に来ないと力が出ないが、彼は開いた状態でも力が出せる。強引に見えるかもしれないが、本人は全然」と話す。ただ再び故障が繰り返されたのは事実だ。

 強引にでも投げを狙いにいく阿部のスタイルが徹底的に研究されている面もある。調整が順調だったにもかかわらず、今大会では持ち味の豪快な一本勝ちがなかったことがそれを如実に物語っている。GSパリ大会に向かう際には「寝技も見せたい」と新たなスタイルの模索をほのめかしていたが、阿部が強いこだわりを持つその柔道スタイルが岐路に立たされているのは確かだろう。

 東京五輪金メダル最右翼と目されていた“怪物”が、今回の世界選手権には丸山に続く2番手の立場で代表に選ばれた。令和の時代でも“怪物”であり続けることができるのか。突きつけられた課題は多い。