JОC新会長最有力の山下泰裕氏を待ち受ける多難

2019年03月21日 11時00分

山下氏の手腕は評価されている

 2020年東京五輪招致疑惑でフランス司法当局の捜査対象となった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)が19日、JOC理事会で任期満了となる6月27日に退任する意向を表明した。国際オリンピック委員会(IOC)委員も近く辞任するという。開幕まで500日を切った五輪で国内組織トップの交代という異常事態。後任として最有力候補に挙がるのがJOC選手強化本部長の山下泰裕氏(61)だ。“ミスター柔道”が新たなかじ取り役を担うが、その前途は洋々とはいかないようで…。

 竹田会長は理事会で「JOCのこれからのことを思うと次代の若いリーダーに託して東京五輪、パラリンピックに向けて新しい時代を切り開いていくのがふさわしいと思った」と語った。その後の会見では改めて「不正なことはしていない」と潔白を主張。「タイミング的に疑惑を認めたと受け取られかねない」と問い詰められても、“引責辞任”ではなく、あくまでも定年での退任だということを強調した。

 一方、山下氏は竹田会長の退任について「大変残念」とぽつり。新会長候補ということに関しては「今日の段階でそういう話にはならない。次の理事会のメンバーが決めることだと思う」と話すにとどめた。ロス五輪柔道金メダリストの山下氏は、全日本柔道連盟の会長も務めている。今後JOC会長に選ばれたとして、会長職の兼任は可能なのか。

 全柔連広報担当者は「定款に記載がないし、前例もないので何とも言えない。ただ、我々はJOCの加盟団体。JOCがどう判断するかによるのでは」と困惑した様子で回答した。柔道界の事情を知る関係者は「ほとんど影響はないと思う。プラス、マイナスの両面でね。柔道は五輪競技として確立されているし、山下先生がJOCのトップになったからって、急に変わるってことはあり得ない」と兼任となっても問題はないという。

 山下氏は選手強化の現場から離れた後、国際柔道連盟(IJF)やJOCの仕事を中心としていた時期があった。そうした中で2013年に柔道界で暴力・パワハラ問題が起こり、改革を求める声に応じて全柔連の副会長に就任。盟友でライバルだった斉藤仁さんの死を乗り越えて、新たな体制づくりに奔走した経緯がある。

 このままJОC新会長となれば、暴力・パワハラ問題から柔道界を立て直した手腕で、招致疑惑に揺れるJОCの新たなかじ取り役を任されることになる。とはいえ、そう簡単な話ではない。「引き受けたら、大変だよ。山下先生が会長になったからって、疑惑が払拭されるわけじゃない。“負の遺産”も引き継ぐことになるんだから。招致に関してまた新たな疑惑とか出てきたら、それこそ火の粉をかぶることになる」(同関係者)

 竹田氏は1月の釈明会見で質疑応答に応じず、7分足らずで一方的に打ち切ったため「逃げ恥会見」とやゆされた。理事会後の会見では十分な説明責任を果たすことが期待されたが、「捜査中で影響がある」などとして明確な説明はなく、疑惑が晴れるどころかより深まった感も拭えない。

 竹田氏周辺の事情に詳しい人物は「トップダウンが基本の外国人には日本の(上は判を押すだけという)ボトムアップのシステムが理解できない。『竹田がトップ。じゃあ、竹田がやったんだろ』とフランスの検察官は思っている」と気になる発言をしている。今後もフランスの捜査の手が緩むことはあり得ず、新会長にどのような影響があるかは未知数なのだ。

 山下氏はクリーンなイメージの上に、あの巨体では想像できないほどキメが細かい仕事もできる。適任に思えるが、ロス五輪では右足の負傷を乗り越えて涙の金メダルを獲得し、国民栄誉賞も受賞した日本スポーツ界の英雄に“火中の栗”を拾わせることにもなりかねない。7月4日に発足する新メンバーによる理事会で次期会長が決まるが、果たしてどうなるか。

関連タグ: