“世界のTK”が柔道全日本男子に伝えたかったこととは――。格闘家の高阪剛(48)が昨年末の男子強化合宿に特別講師として招かれ、総合格闘技(MMA)の基本動作をはじめ、打撃やタックルからの寝技などを伝授した。世界選手権66キロ級で2連覇中の阿部一二三(21=日体大)、リオ五輪90キロ級金メダルのベイカー茉秋(24=日本中央競馬会)とはスパーリングに臨んだ。

 もともと柔道出身。世界最大の総合格闘技イベント、米「UFC」で活躍した当時、米国留学していた全日本柔道連盟の金野潤強化委員長(51)と親交を深めた。その縁で、金野氏が監督を務める日大柔道部で指導にあたったことがきっかけになったという。

 指導で日本のトップ選手に何を伝えたかったのか。高阪は「自分が中、高、大、そして社会人でも柔道を経験し総合格闘技に移った中で、柔道時代には考えもしなかったことに、自分自身の体としっかり向き合って、どうすれば使いこなせるようになるのか、というのがあった。自分の中で生まれてきてくれたそういったものが、世界のてっぺんを目指している選手たちに少しでも伝われば」。試合では相手の対応の先の動きをすることが大事だとも強調した。「こっちが1の動きから2、3と続くなら2を飛ばして3の動きをするとか。虚をつかないと」

 では指導してみてMMAに向いている選手はいたのか。高阪は「…。いても言わない。純粋に五輪を目指してほしい」。来年に迫った東京五輪での金メダル量産へ向けて格闘界のレジェンドが“援護射撃”する。