【体操パワハラ】「塚原支配」の構造 協会側さえも牛耳る実態は…

2018年09月07日 11時00分

宮川への暴力行為を謝罪する速見コーチ

 逃げ道はなくなってきたのか。体操女子でリオ五輪代表の宮川紗江(18)に暴力を振るった速見佑斗コーチ(34)が5日、都内で会見し、宮川が「パワハラを受けた」と告発した日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長(71)、塚原光男副会長(70)による“支配の構造”を明かした。コーチ陣ですら畏怖する状況で、協会幹部も現場からの「SOS」をスルーしていたという。塚原夫妻の処分は第三者委員会の調査に委ねられるが「厳罰確定」との見方が強まっている。

 速見コーチはまず冒頭で「宮川選手に対する度重なる暴力行為によって、宮川選手はもちろん、周りにいた選手、コーチに対して、不快な思いと恐怖を与えてしまったことを深くおわび申し上げます」と謝罪。体操協会からの無期限登録抹消処分を受け入れ、「どういう小さな暴力であっても一切、暴力行為を行わないことをここに誓います」と宣言した。その上で宮川との師弟関係の継続を「宮川選手が望む以上は環境は整えてあげたい」とし、ともに東京五輪での金メダル獲得を目指していく考えを示した。
 
 その一方で、塚原夫妻については「怖くて何も言えない。他のコーチも提案したいけど、言ったら何かされるんじゃないかなとか、意地悪されるんじゃないかなという部分がある」と話した。実際にパワハラも受けたという。プロジェクト「2020東京五輪特別強化」に宮川が参加しなかったことで海外遠征から外された。そんなルールは明記されていなかったが、千恵子氏から「2020に入らなかったから派遣しなかった」と直接言われたと証言した。
 
 絶対的な力は体操協会そのものも牛耳っているという。速見コーチは昨夏「2020東京五輪特別強化」について山本宜史専務理事と渡辺栄事務局長に改善を訴えた。「『協会として改善する必要がありますね』という回答を受けていたのですが、それに対しての回答というのはそれ以降、一度も頂いていないのが現状」(速見コーチ)。2人の幹部はスポーツ庁など4団体に今回の経緯を報告した当事者だけに、速見コーチの発言通りなら“塚原体制”の刷新は必要不可欠となる。
 
 実際、リオ五輪後に千恵子氏の肝いりで立ち上がった「2020東京五輪特別強化」に対しては、宮川、速見コーチ以外の関係者の間でも不満が広がっている。対象選手の選考基準や強化計画などが明確に示されていないことは、宮川が8月29日の会見で指摘した通り。

「それでも、協会からは強化費が出ているはずなんですが、参加している選手たちは毎月3万円徴収されています。それらがどのように使われているのか、選手やその所属先にも説明がないのが現状です」(体操関係者)
 
 不正流用などの実態はなかったとしても、周囲がそんな疑いを持つような不透明な管理体制になっていたようだ。
 
 では第三者委はこうした状況をどう判断するのか。この日、委員長に弁護士の岩井重一氏が就任することが発表された。岩井氏は「中立・公正な立場で徹底的な調査を行う」とコメントし、メンバー選定を進めている。ただ、このままではどんな調査結果になろうと、厳しい処分が科せられるとの声が強まっている。
 
 事情に詳しい関係者によれば、処分を科す際に参考にするのが前例。「弁護士や裁定委員会も前例で逃げたい。より重い処分を下せば逆に訴えられる」からだ。パワハラで日本レスリング協会から常務理事を解任された栄和人前強化本部長(58)や2013年の暴力・パワハラ問題で全日本柔道連盟が下した処分などが前例になるという。
 
 こうした前例によれば「事実上の(協会)追放になる。(残留し)代表選手が『塚原コーチの下ではやれません』と言いだしたら東京五輪どころじゃない」(前出関係者)。塚原夫妻の命運はいかに…。