体操・塚原夫妻“音声爆弾”自爆の危険 逆にパワハラ立証するようなもの

2018年09月02日 11時00分

塚原副会長は余裕の笑顔!?

 体操女子でリオデジャネイロ五輪代表の宮川紗江(18)が日本体操協会の塚原光男副会長(70)と妻の千恵子女子強化本部長(71)からパワハラ行為を受けたと告発した問題が、混迷を深めている。31日には塚原夫妻が文書で見解を発表。宮川に対して不適切な発言があったことは認めたものの「宮川選手を脅すための発言はしていません」と、パワハラを全面否定した。しかも潔白の証拠となる“録音爆弾”があることも明らかにしたのだが…これが思わぬ波紋を広げているのだ。

 連名でパワハラ問題に対する見解を発表した塚原夫妻は、宮川が暴力指導で処分された速見佑斗コーチ(34)の指導継続を望むことについて「宗教みたい」と語るなど一部に不適切な発言があったと自らの過失を認めつつも、一連の問題に関しては潔白を主張した。

 最も注目を集める「東京五輪に出られなくなるわよ」という発言については「伝えたのは事実」としながらも、意図が違ったとして「決して、宮川選手を脅すための発言はしていません」と反論した。また、朝日生命体操クラブへの勧誘も「真実と異なります。宮川選手に関して、一切、勧誘を行っておりません」と全面否定した。

 一方で、宮川サイドには“録音爆弾”を投下した。宮川との会話を収めた録音があることを明かし、第三者委員会の調査に提出するという。「録音内容をお聴きいただければ、私(千恵子氏)が決して高圧的な態度ではないということはお分かりいただけると思っております」とし、自信ものぞかせた。

 実際、録音内容は一部のテレビ番組で放送された。宮川が塚原夫妻に密室に呼び出され、パワハラを受けたとされる7月15日の翌日のものだった。これがすべてなのか、それとも“隠し玉”が他にあるのかは不明で、なんとも不気味だ。

 ただ、皮肉にも波紋を広げているのは中身ではなく、千恵子氏がとった録音という手段とその方法。千恵子氏は「(宮川が)弁護士を立てて(所属先と)争っているような状況だったので、念のために録音した」と説明したものの、フジテレビ系「直撃LIVEグッディ!」に生出演した宮川は番組内で「全く気づかなかったですし、どうして録音していたか疑問」と困惑の表情を浮かべた。

 宮川の代理人を務める山口政貴弁護士は本紙の取材に「『パワハラがない』って言っているほうが録音とは『なんで?』と思う。真意が分からない」とした上で、千恵子氏の手法に「問題あると言えばある」と不快感を示した。ネット上では「卑怯な手」「孫ほどの選手に情けない行動」などと批判が続出しており、録音の存在は風向きを変えるどころか、完全に「裏目」に出ている。

 今後もよほどの証拠がない限り、大勢に変化はないという。何より、立場のある指導者2人が18歳の未成年を密室に呼び出し、その際の不適切な言動で「宮川紗江選手の心を深く傷つけてしまった」(塚原夫妻文書)のなら、その時点で立派なパワハラと言える。

 元日本バスケットボール協会裁定委員長で全日本柔道連盟の暴力・パワハラ問題の解決にも携わった広報・危機対応コンサルタントの山見博康氏は録音について「そんなことをするようだったら下心があったということ」と話し、逆に自らパワハラを立証するようなものだという。「録音してようがしてまいが関係ない。宮川さんは『私が言っていることは正しい』と言えばいいんです。18歳の女の子は命を懸けて言っている」と指摘した。第三者委に録音の都合の良い部分だけを提出することも可能だが、山口弁護士は「いいところだけ一部切り取って穏やかな発言だけ出されても『そうですか』って感じで終わっちゃう」と一蹴した。

 塚原夫妻は今後、会見を開くことも検討している。「私たちの進退については第三者委員会の結果等も踏まえ、各関係者と協議することも検討しております」(文書原文ママ)と現時点では辞任の考えがないことも示したが、果たしてどうなるのか。旗色は甚だ悪くなる一方のようだが…。