アメリカンフットボールの定期戦で日本大学の選手が悪質タックルで関西学院大学選手を負傷させた問題で関東学生連盟が29日、都内で臨時理事会を開き、日大に対しての処分を決定した。内田正人前監督(62)と井上奨前コーチ(30)は最も重い「除名」、森琢コーチ(44)は「資格剥奪」、反則を行った宮川泰介選手(20)とアメフット部は条件付きの「公式試合の出場資格停止」となった。果たしてこれで「真相究明」となるのか。数々の不祥事に携わった危機対応のプロがその見通しを語った。

 調査を担当した規律委員会は森本啓司専務理事(48)を委員長とする4人で構成され、当事者を含め約20人の関係者から聞き取りを行った。当該選手である宮川選手と内田前監督や井上前コーチの言い分が食い違っている点については4項目に絞り、いずれも内田前監督側の主張を退けた。

 内田前監督らが指導と受け取る側に「乖離があった」と繰り返した点も「日大が主張する認識の乖離は存在しない」(森本専務理事)。「ほぼ当該選手の内容と一致していた」という周囲の証言と照らし合わせ、内田前監督の発言を「おおよそすべてに信用性がない」「供述は虚偽である」と厳しく断じた。「除名」とした理由を「指導者失格」と批判し、森コーチの責任も追及した。

 理事会では処分の内容に20人中16人が賛成し、4人が反対した。前例のない「除名」は社員総会での承認が必要で異議申し立ても認められる。とはいえ、これで内田前監督と井上前コーチは事実上のアメフット界永久追放となった。

 一方、宮川選手とアメフット部は2018年度シーズン終了までの出場停止となるが、反省文の提出など複数の条件を満たせば処分は解除され、秋のリーグ戦にも復帰できる道が開けた。日大は「早急に具体的な改善策を策定、実行し、二度とこのような事案が起こらないよう不退転の覚悟で進めてまいりたい」とコメントした。

 規律委は宮川選手に関して部員や関係者から主張の正当性を裏付ける多くの証言を得たことを明かした。これはさらなる真相究明へもプラス材料となるが今後、本当に「真実」が白日の下にさらされるのだろうか。

 元日本バスケットボール協会裁定委員長で全日本柔道連盟の暴力・パワハラ問題の解決にも携わった広報・危機対応コンサルタントの山見博康氏は「信ぴょう性をどうするか。録音テープと、それから他の選手が発言を聞いているはずです。選手の見解が大きい」と周辺証言の重要性を語った。

 日大は近く第三者委員会を立ち上げ、独自調査を行う。新たな証拠の積み重ねは内田前監督の発言を覆す何よりの決め手になる。内田前監督は複数のコーチに指示を出しており、そのコーチが発してきた言葉も有力な証拠になるという。

 内田前監督と歩調を合わせた井上前コーチについては、本人を説得する余地も残されている。別の危機対応のプロは「監督は井上コーチの生活を握っている。典型的な殿様との主従関係。監督は生きていけるけど、井上コーチはこのままいったら生きる道はない。監督と決別すれば生きる道はある。『早く決別せえ!』と説得するしかない」。

 アメフット界追放となった内田前監督だが、日大では人事担当の常務理事など要職にあるだけに、大学内で部への影響力は変わらない…との見方は根強い(本紙既報)。そうしたなか、側近の懐柔が、日大を牛耳る“内田一派”の切り崩しを実現させる最大の近道になるという。

 教職員組合も「近々行動します」とアクションを起こす用意をほのめかしている。警察の捜査も進んでいる。勇気を持って会見した宮川選手の発言を否定した“伏魔殿”のような日大アメフット部のあしき体質に、メスが入る時が来たのか。