体操の全日本個人総合選手権最終日(9日、東京体育館)、男子決勝はリオ五輪2冠のエース・内村航平(28=リンガーハット)が合計86・350点で前人未到の10連覇を達成した。

 2位の田中佑典(27=コナミスポーツ)とはわずか0・05点差だった。それでも勝った。僅差の内容を制した内村は「勝ってしまったので地獄です」と笑わせると、すぐにこう続けた。

「逆にそれくらい追い詰められたほうがいいと思っている。これからも若手がどんどん強くなってきてますけど、若手たちにもしっかり(見本を)示していけるような体操選手でありたい」。まだ世代交代は許さない。絶対王者としての意地をのぞかせた。

 リオ五輪後、競技から離れ、体調を戻すのに苦労した。予選は4位。平行棒でミスをし、白井健三(20=日体大)ら若手の後塵を拝した。しかし、得点を見た内村は冷静だった。

「1位との点差を見ると、0・7点差あって平行棒のミスがなければ、ボクは1・5点上がる計算。失敗せずやれば、間違いなく埋められると思った」。その狙い通り、平行棒は不安を排除する構成で臨み、本来の得点を獲得した。

 最後の鉄棒は「今までで一番悪いくらいの鉄棒の演技だった。途中で笑いそうになりました」と不完全燃焼だったものの、着地をピタリと決めて、歴史的な快挙をたぐり寄せた。

 なお、女子は村上茉愛(20=同)が合計56・450点で2連覇を成し遂げた。