出場か、回避か――。体操の全日本選手権・男子個人総合決勝(24日、東京体育館)で故障直後に〝強行出場〟した岡慎之助(18=徳洲会)を巡って、一部関係者の間で議論が交わされた。

 問題のシーンは4種目目の跳馬。この時点で橋本大輝(順大)に0・332点の僅差で2位につけていた岡は着地で右ヒザをひねり、その場に倒れ込んだ。苦痛に顔をゆがめ、競技フロアの外に出されて緊急処置。そのまま棄権する選択もあったが、本人と陣営は出場に踏み切った。

 5種目目の平行棒に出た岡は執念の演技を見せたが、着地で立つことができず、うずくまってしまった。痛々しい姿に会場からは小さな悲鳴も漏れ、岡は担架で搬送。最終種目の鉄棒は演技できなかった。

 関係者によると、負傷箇所は「おそらく靭帯」という。負傷後の出場について米田功監督は「本人とコーチ陣の中で、行くか行かないかを考え、行く方向にした。平行棒の準備をし、テーピングを巻いて行ける準備だけ整えた。あとはアップやってから判断しました」と説明。続けて「やり切らせるか、引かせるのか。すごく難しかったと思います」と悩ましい表情を浮かべていた。

 一方、関係者からは「選手人生を考えれば回避もあった」との指摘もあった。世界選手権(10月、英リバプール)の権利もかかり、Vの可能性も残していたため出場へ踏み切ったようだが、関係者の中には「9つの技だけ実施し、降り技だけやらないという選択もあった。それなら終末技の減点だけで済む。最後だけゆっくり降りれば良かったと思います」という声も上がっていた。

 最終的に平行棒の〝強行出場〟によって合計153・53点で29位。NHK杯(5月15日、東京体育館)の権利を得ることはできたが、果たして岡の今後はどうなるか。