目指すは究極の「美」――。体操界のキング・内村航平(33=ジョイカル)が12日、自身の引退イベント「KOHEI UCHIMURA THE FINAL」(東京体育館)で集大成を飾った。

 この日は床から始まり、最後の鉄棒まで全6種目を演じ切り、試合後は「6種目やる過酷さを改めて…。ホント、終わった瞬間から全身が痛くて。あ~、やめて良かったなって率直に思いました」と苦笑した。

 とはいえ「美しさ」を求める姿勢に妥協はなかった。最後の鉄棒で着地を止められなかった際、戦友・山室光史(コナミスポーツ)の言葉を借りると「相当、悔しかったんだろう。顔に出ていた」。また、自身のあん馬の写真が会場の大型ビジョンに映しだされ、同僚から絶賛されながらも「ちょっと腰が曲がっている」と納得していなかった。

 引退後も体操の研究を続けるというキング。果たして、どこまで美しさを追い求めているのか? そう問われると熟考した末に「体操を見ていると思わせないことですかね」と話し、こんな説明を始めた。

「芸術作品でなければいけないと思っています。体操の競技の枠を超えて、絵を見ているような、または美しい川の流れを見ているような。体操の技がすごいとか、見せ方がすごいとかは、まだまだ。漫画で必殺技の時に何かが憑依しているっていいますが、まさにアレです。漫画的なところまで伝える選手っていうのが、本物の美しさを備えた選手だと思っていますね」

 まさに別次元の領域。しかし、内村は体操に携わる子供たちへ「まずは体現してくれる人のマネをすること。僕も小さい時は当時の日本代表選手たちのマネをしてやってきた。ああいうふうになりたいって思うことが大事。何でもいいのでマネするのが一番の近道だと思います」とメッセージを送った。