世界体操V5内村航平 異次元の強さを支える驚きの練習法

2014年10月11日 09時00分

【中国・南寧9日発】体操の世界選手権第7日、男子個人総合決勝が行われ、ロンドン五輪金メダリストの内村航平(25=コナミ)が6種目合計91・965点で自身の史上最多記録を塗り替える5連覇を成し遂げた。全種目でただ一人高得点の15点台を並べる総合力の高さを見せ、2位に1・492点差をつける圧勝劇。ライバルたちの追随をまったく許さない異次元の強さだったが、体操界の常識では考えられない練習をこなしてきたことが今回の快挙につながったという。

 無念の銀メダルに終わった団体から2日、気持ちを切り替えた内村に迷いはなかった。1種目目は得意の床運動。「全部(着地を)止めてやろう」との言葉通り、E難度の大技などすべての着地を成功させ、24選手中最高点の15・766点を叩き出した。

 これで波に乗ると、4種目目の跳馬では高難度の「ヨー2」を完璧に決めて、またも最高点。珍しく笑顔を見せた時点で勝負はほぼ決まった。最後の鉄棒でもG難度の「カッシーナ」など華麗な離れ技を難なく成功。「言いたいことは山ほどある」と異議を唱えた団体での採点の悔しさを胸にしまい、「文句のつけようがない演技」で再び金メダルを手にした。

 それでも「結果としてみたら金メダル、5連覇で良かったと思うが、平行棒、鉄棒がちょっとしんどかった。跳馬まで良かったのに失速した。まだまだだなと思います」と内村は不満げ。100%の力を発揮しての5連覇でないというのは驚くばかりだが、それでも勝てるのは普段からあえて“逆境”を想定しているからだ。

 コナミの加藤裕之監督(50)によると、内村はまったくアップもしないで全種目をやってしまう練習をしているという。「普通はできません。たぶん、世界で誰もいないと思います」。体操界の常識を覆す練習は、一歩間違えば選手生命を失うような大ケガをしかねない。見守る周囲も冷や汗ものだ。

 だが、この想像を絶するような「6種目通し練習」をロンドン五輪前から自らに課していたことで、万全のコンディションでない状態でも高難度の技をこなせるようになった。加藤監督は「他の選手は限界ぎりぎりの力を出し切っての勝負。航平は高難度の技をもっと習得しているが、あえて無理のない構成にとどめている。力の数十%で戦える」と説明する。新興勢力といわれた2位のマックス・ウィットロック(英国)に「得点を見れば分かるように、現時点で(内村)航平には歯が立たない」と白旗を掲げさせた。

 他競技に比べると体操は、トップ選手のピーク寿命は短いと言われる。3位に入った同僚の田中佑典(24=コナミ)や白井健三(18=岸根高)らの台頭で代表チームに世代交代の波が確実に押し寄せる中でも、別次元の強さを誇る内村に衰えはない。

 加藤監督は「まだまだ実力的にはほかの選手と離れている。いけるところまでいってほしいな」と2年後のリオ五輪、6年後の東京五輪までの現役続行を熱望する。それは内村のためだけでなく、加藤監督の長男・加藤凌平(21=順大)や野々村笙吾(21=順大)など次代を担う若手に、刺激を与える存在でいてほしいという願望からだ。「(内村が)強い存在でいてくれたほうが(超える)やりがいがある」

 もちろん、年齢との闘いもある。だが内村が先頭を走り続けることで全体の底上げが図られ、とてつもない相乗効果を生み出す。規格外の練習から生まれた異次元王者にかかる期待はまだまだ大きい。