体操の東京五輪代表選考会を兼ねたNHK杯(長野・ビッグハット)の男子競技が16日に行われ、五輪個人総合2連覇の内村航平(32=ジョイカル)が種目別の鉄棒で15・333点の高得点をマークした。

 H難度の大技「ブレトシュナイダー(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)」をはじめ、カッシーナ、コールマンも成功。着地でやや動くと、首をかしげて苦笑いを浮かべた。本人は「全然、納得がいかない」と言いつつ、「自分が満足する演技」にこだわったが、周囲はどう見るのか?

 水鳥寿思強化本部長(40)は「現地に入ってからもすごく余裕があるなと見ていました」としたうえで「安心感が生まれてきている印象。得点的にも五輪であの演技を出せれば金メダルの可能性は非常に高いと思う。このまま積み上げていって、ぜひ権利を獲得してほしい」と絶賛した。

 一方、審判席から演技を見ていた日本体操協会の高橋孝徳男子審判本部長(52)は「今日は他の選手もみんな全日本選手権(4月)の時より仕上がりが良くなって安定感が出ていた。ただ、頑張り過ぎたことによる減点もあった。着地でいつもより力が入って床ではじかれたりするケースが見られた」と大会全体を総括しつつ、内村の演技を〝審判目線〟でこう分析する。

「手離し技の時、空中に体が跳んだ後に自分からバーをつかみにいく行為が欲しい。ブレトシュナイダーはひねる回数も多く、やるべきことがたくさんあるからバーをつかむまでに時間がかかる。余裕がないと下でつかむことになるので、そのへんが足りなかったですね」

 もちろん内村のポテンシャルを知った上での要求。本人も現状に納得はしておらず、伸びシロが十分ある証しだ。なにせ今大会の鉄棒で15点以上は内村ただ一人。鉄棒2位・神本雄也(26=コナミスポーツ)の14・700点を考えると、完全に〝一人旅〟状態だ。

 内村は種目別(鉄棒)の個人枠での五輪出場を目指している。6月の全日本種目別で「1枠」を懸けた最後の戦いに挑む。