体操のひねり王子・白井健三(17=岸根高)が“白井語録”を封印して、2度目の世界選手権(10月、中国・南寧)代表の座を勝ち取った。

 全日本種目別選手権最終日(6日、千葉ポートアリーナ)の男子床運動決勝で、白井は3週間前に負傷した右足首の不安を払拭する演技を見せ、16・100点で2連覇を達成。世界選手権の代表に滑り込んだ。「集中していた。楽しい雰囲気で演技できた」と笑顔で話したが、舞台裏では初めて味わう緊張と闘っていたという。実際、「ボクらにとっては奇跡」と表現した父の勝晃さん(54)は白井のある“異変”を感じ取っていた。

「彼にいろんな語録があるんですよ。自分の口からポロポロ出てくる。今回は3週間前に劇的なケガをしましたので、そういう余裕はなかった。初めて? そうですね。ギリギリでした…」

 白井といえば、どんな時でも明るく周囲をもり立てる好青年。トークは魅力の一つで取材でも「練習を練習だと思ったことがない」など“名文句”を残すことも多い。そのテクニックは「どこかのアナウンサーが『ああいうふうに場を盛り上げられるのは、アナウンス学院で3年ぐらい習ってないと分からないんだよ』と言ってました」(勝晃さん)とプロ顔負けのレベルだが、今回ばかりは全く聞かれなかったというのだ。

 まさに薄氷の勝利を収めた白井だが、この試練を乗り越えたことでさらに成長することは必至。世界選手権での大暴れが期待できそうだ。