日本体操協会は7日、新体操の日本ナショナル選抜団体チーム「フェアリージャパン」が国立スポーツ科学センター(東京・北区)で行った練習風景を公開した。

 東京五輪は新型コロナウイルス感染拡大の影響で来年夏に延期。五輪閉幕の華といわれる新体操は本来ならこの日からスタートするはずだった。もしコロナがなければ…。その複雑な思いをメンバーはそれぞれ打ち明けた。

 キャプテンの杉本早裕吏(24=トヨタ自動車)は「今この状況で自分が五輪の舞台で踊っているイメージが湧きません」、熨斗谷さくら(22)は「今となっては想像ができません」、竹中七海(21)は「本来なら本番で踊っていたのかなと考えると不思議な感じがします」と三者三様の胸中を口にする。

 昨年9月の世界選手権では種目別ボールで団体史上初の金メダルの快挙を達成。東京五輪での期待が一気に膨らんだだけに、延期が決まった際は「受け止めるのに時間がかかりました。今までにないくらい悩みました。2020年にかけてきたからこそ、ショックで先が見えなくなりました」と杉本は振り返る。

 緊急事態宣言発令の4月8日から6月9日まで約2か月の活動自粛。家族より長い時間を一緒に過ごしてきたメンバーは離れ離れになった。これまで10日以上も会わなかったことはなく、改めて絆を再確認した期間でもあった。鈴木歩佳(20)は「みんなの存在がどれだけ大切なのか改めて感じました。再会した時は跳び上がるくらいうれしかった」、熨斗谷は「結局メンバーとほぼ毎日、連絡を取っていました。会いたくもなり、オンラインで一緒にトレーニングをしたり散歩もしました。この時代であったことに感謝します」と語り、今では「よりメンバー愛が増している」と言い切る。チームのまとめ役・杉本は常にメンバーの体調を気にして連絡を取った。メンバーの一人が誕生日を迎えると、みんなで〝リモートバースデーパーティー〟を開いてお祝いしたという。

 現在、練習中は手具やバーを定期的に消毒し、作品練習以外はソーシャルディスタンスの確保。練習中に声を出す場合はマスクを着用し、マスクなしの場合は声をかけないよう徹底している。もちろん、夜間の外出は禁止だ。金メダルを目指すロス五輪代表で日本協会の山崎浩子強化本部長(60)は「そのままの状態では金メダル水準にはなかった。ちょうど練習の中身を考えなければならないと思っていたころに五輪の延期が発表されたので、いい機会だったと思います」とプラスにとらえている。

 開催が危ぶまれる東京五輪。アスリートの中には「五輪が全てではない」との意見もあるが、竹中は「中止になるかもしれないということは正直、考えたくないくらいつらいです」と本音を漏らす。1年後、閉幕の華は無事に咲いているだろうか。