日本体操協会は7日、新体操の個人特別強化選手のエース・皆川夏穂(22=イオン)が千葉県内で行った練習風景を公開した。

 ロシア人コーチのナディア・ホロドコバ氏の指導を受け、フープなどの手具を使った練習で汗を流した皆川。「今、練習できていることが感謝の気持ちでいっぱい。毎日の練習が楽しいし、自分がどれだけ新体操が好きなのかを改めて感じました」と晴れやかか笑みを浮かべている。

 2017年新体操世界選手権の種目別フープで日本人42年ぶりのメダル(銅)を獲得。日本のエースは本来ならこの日、東京五輪金メダルを目指して予選を戦っているはずだった。大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で五輪史上初の延期。目標が目の前から消えた皆川は一時「自分が今どこにいるのか不安になった」というが、その後はすべてをプラスに変えた。自粛期間中は手具の感覚を失わないようボールやクラブなどを使いながら体幹トレーニングを行い、練習以外の時間は料理や英会話にあてた。「オンラインでの勉強、洋画やドラマを字幕で聞いて覚えるようにしています」。なによりコロナ禍によって決定的に変わったのが競技への「価値観」だった。

「好きなものに打ち込めることがどれだけ恵まれていたことかを改めて実感した。練習と試合の繰り返しの日々が当たり前だと思っていたけれど、それは全く当たり前ではなく、たくさんの人々のサポートがあって成り立っていると分かった」

 さらに、コロナ禍で開催の是非が問われる東京五輪への思いも吐露。「五輪は誰もが知っているスポーツの祭典。世界中の人々が一体となる、とても素晴らしい大会」と位置づけつつ、こんな見解も口にする。

「たくさんの人々が苦しむ中でスポーツ選手だけがやりたいことをやっていていいのかという気持ちもあります。スポーツよりも世界中の皆さんの健康・命の方が大事。安全に開催されることが一番だと思っています」

 その上で、皆川はスポーツが持つ力にも言及。「私たちスポーツ選手が全力を尽くし、この大変な状況に光を与えることもできるのではないか」。現実を見据えた上で、一筋の希望もしっかり胸に抱いている。