【体操】リオ五輪団体金・山室光史 内村航平はライバルだが「誰よりも僕が航平を好きなんです」

2020年07月30日 11時00分

2016年リオ五輪で山室は内村(左)とともに団体金メダルを獲得

【どうなる?東京五輪・パラリンピック(89

)】体操ニッポンの男子強化合宿が27日から行われている。来年夏に延期となった東京五輪の開催を信じて勝負が再開された一方で、合宿に参加できない者の闘いもある。2016年リオ五輪団体金メダルのメンバー・山室光史(31=コナミスポーツ)は強化選手から外れ、所属クラブで練習を積みながら五輪出場を狙っている。本紙インタビューでは自身が描く未来像と、同学年で五輪個人総合2連覇の内村航平(31=リンガーハット)への思いを語った。

 2016年夏、団体金メダルを獲得した体操ニッポンの歓喜の輪に山室もいた。あれから4年、体操界の勢力図は一変。昨年秋の世界選手権はメンバーがガラッと若返り、リオ組は全て代表から外れた。山室も「リオが終わって1~2年は体の状態がすごく悪かった」と肩のケガに悩まされ、煮え切らない日々が続いた。だが、様々な治療を模索して体は改善。一時は「東京五輪で引退」を考えたが「最終地点を決めてやっている選手で成功した例を見たことない。やっぱり現役のうちは最後を決めないでやる」と心境が大きく変化した。今では「心と体が続く限りは(24年)パリ(五輪)までやろうと思っている」と先を見据えている。

 現在は強化選手ではないため、味の素ナショナルトレーニングセンター(東京・北区)は使用できない。金メダル組から離れ、所属のコナミで調整する日々だ。未曽有の新型コロナウイルス禍にあって「海外遠征ではアクシデントもたくさん経験した。臨機応変に対応する力はベテラン選手のほうがあるかな」と穏やかに笑う。日体大4年で出場したパリW杯では会場が急きょ変更された。「練習会場で調整していたら、本番会場で僕の名前が呼ばれていて…。急いで200メートルくらい走ってそのまま演技しました」。不測の事態への対応は「ある意味で諦めること」と達観している。

 山室を語る上で、同学年の内村は切っても切り離せない。高校時代から互いを意識し、日体大からコナミと同じ環境で志をともにしてきた。そんな盟友をハッキリと「ライバル」と言い切る。

「彼のほうが、だいぶすごい実績を残している。バカじゃない?って言われるかもしれませんが、選手をやっている以上は心の中でそう思っていたい」。互いに言葉を交わさなくても分かり合える「唯一無二の存在」だという。

 内村は東京五輪で個人総合と団体を断念し、鉄棒に絞る決意を固めた。断腸の思いは山室にも以心伝心した。

「航平の体操が見られないことは僕にとっても、多くの人にとっても残念なこと。たとえ1種目だとしても、五輪で内村航平らしい完成した演技を見るのが楽しみです」

 ライバルでありながら、日本一のファンでもある。五輪2連覇の内村に対して「うらやましいと思ったことはありますが、ねたんだことは一回もない。尊敬しているし、誰よりも僕が航平を好きなんですよ」とほほ笑む。高校時代、一つの契りを交わした。
「将来、五輪の個人総合で同点優勝しよう」

 その約束は果たせないが、互いが模索した新たな道で一緒に輝く夢は残されている。

 ☆やまむろ・こうじ 1989年1月17日生まれ。茨城・古河市出身。埼玉栄高から日体大を経て2011年4月にコナミスポーツに入社。同年10月の世界選手権(東京)で個人総合とつり輪で銅メダル、団体で銀メダルを獲得。五輪は2大会に出場し、12年ロンドン大会で団体銀メダル、16年リオ大会で団体金メダルに貢献した。得意種目はあん馬、つり輪、平行棒。159センチ、56キロ。