【体操】田中佑典 “同世代スター”のマエケン&真央の動画が自粛期間を支えた

2020年07月22日 11時00分

ツインズ・前田健太が推奨する肩ストレッチを実践する田中佑典

 2人の「一流」から力をもらった。リオデジャネイロ五輪体操男子団体金メダルの田中佑典(30=コナミスポーツ)が本紙のインタビューに応じ、新型コロナウイルス禍で開催が危ぶまれる来夏の東京五輪への思いを吐露。自粛期間中には、野球界とスケート界を代表する“同世代スター”の動画を見て成功へのヒントをつかんだという。さらに東京五輪を「集大成」と位置付ける考え方も改めていた。

 コロナ禍の中、新たな挑戦を志し、新境地を切り開いたアスリートは多い。五輪金メダリストの田中も前代未聞の事態を逆手に取った。

 自粛期間中に「部屋を模様替えし、マットを敷いてトレーニングした」と有意義に過ごす中で動画サイト「ユーチューブ」にも着目した。「普通に時間が流れていると、なかなか他競技の選手を見ることができない。でも、こういう機会なので、何かヒントはないかと思って他のアスリートの動画をたくさん見ていましたね」

 そこで出会ったのがメジャーリーガー・前田健太投手(32=ツインズ)の動画だ。肩のケガに悩まされ続けた田中にとって、前田が紹介する「故障しにくい肩のトレーニング」はまさに目からウロコだったという。「うつぶせでヒジを立てて肩甲骨を動かすトレーニングです。こんな動かし方があるんだ!って思い、ずっと家でマネをしていました」

 前田といえば前傾姿勢で肩をグルグル回す“マエケン体操”が有名。これも「見よう見マネでやりました」と取り入れた。田中は「結構できた方だと思いますが、あそこまで動かすのは難しい。肩甲骨を意識的に動かすヒントをもらいましたね」と五輪本番に向けて“マエケン流”で調整を続けている。

 もう一人、大きな刺激を与えてくれたのがフィギュアスケートの元世界女王・浅田真央(29)だ。2014年ソチ五輪のショートプログラムで大失速(16位)し、メダル獲得が絶望的な状況で迎えたフリーの演技を改めて見た。「技を見て何かを得ようってことより、真央ちゃんの競技への姿勢ですね。僕らは結果を追い求めるのですが、あれを見て結果がすべてじゃないんだなって。ホントに心にグッと響きましたね」。日本中が泣いた伝説の“神動画”から同じ競技者として感銘を受けたという。

 田中は現在、3大会連続となる東京五輪出場を目指して練習中。未曽有の事態にも「自分がコントロールできないことは仕方ない。やはり命あってのこと」と話し、引退は一切考えなかった。12年ロンドン五輪では兄・和仁氏(35)、姉・理恵さん(33)とともに出場した。「五輪に育ててもらった」という“体操界のサラブレッド”は、東京五輪を最後に引退する考えも改めた。

「集大成って位置付けることに意味をあまり感じなくて。もちろん、そこに全力を懸ける気持ちは大事。でも、集大成ではなく通過点ととらえ、もっと先を見た方が強くなれる気がしますね」

 来年夏は31歳。最後に24年パリ五輪について問うと「あり得ますね。東京の次はもう3年後ですから」と笑った。五輪が運命づけられた男の体操人生は当分、続きそうだ。

 ☆彡たなか・ゆうすけ 1989年11月29日生まれ。和歌山市出身。兄・和仁、姉・理恵の影響で体操を始める。順大を経て2012年にコナミスポーツ入社。同年夏のロンドン五輪では兄とともに団体銀メダルを獲得した。15年の世界選手権(スコットランド)、16年のリオ五輪では団体金メダル。得意種目は平行棒と鉄棒。166センチ、58キロ。