【体操】高校生エース・橋本大輝「内村さんの記録を全部塗り替えたい」

2020年01月21日 11時00分

色紙に東京五輪の目標を記した橋本

 東京五輪まで6か月あまり、代表争いは佳境に突入。各競技の勢力図を見ると、新しい顔触れが目立っている。なかでも急速に世代交代が進むのが体操ニッポンだ。そのど真ん中にいる高校生ルーキー・橋本大輝(18=市船橋高)は、今の若きアスリートには珍しい“大言壮語”で自分を鼓舞する。本紙連載「『令和』に刻む東京五輪」では、体操界の“キング超え”を高らかに宣言し、金メダル獲得の明確なビジョンを披露。さらに、あの同級生ヒーローへのライバル心をむき出しにした。

「目の前の試合に集中します」「結果を気にせず頑張ります」。近年はこんな小ぎれいにまとまった若手選手のコメントがみられる。だが、体操界で世代交代を狙う橋本は違う。

 五輪2連覇のキング内村航平(31=リンガーハット)、リオ五輪団体金メダルの白井健三(23=日体大大学院)が代表漏れした昨年10月の世界選手権、高校生として白井以来2人目の代表入りを決めた際には「橋本の出場」より「内村の落選」がクローズアップされた。その時、心の奥底にあった本音をこう漏らす。

 橋本:出るのはボクらなのに、何でそういう(内村の)質問ばかりなんだろうって。遠回しに「内村さんが外れたからお前が入れたんだろ」って言われている気がして、正直イライラしました。確かに内村さんはいないし、初出場が3人。経験は少ないけど、今の日本で強いのはボクらだっていう気持ちで戦っていましたね。

 ともに抱いた反骨心が生んだ団結力。萱和磨(23=セントラルスポーツ)、谷川航(23=同)、谷川翔(20=順大)、神本雄也(25=コナミ)と挑んだ団体では銅メダルに終わったが、橋本は全種目でチームに貢献して存在感を示した。さらに日本国内の個人総合王者を決める昨年11月のスーパーファイナル(SF)も制覇。本紙が渡した色紙には「自分がエースになって金をとる」と力強く記した。実際、歓喜の瞬間、キング超えをハッキリと子細にイメージしているから驚く。

 橋本:まず団体では最後の鉄棒を自分が任され、演技台に立つ姿が見えています。そして個人総合では、平行棒まで負けていて、最終班の鉄棒で着地を止めて大逆転で金メダル!って想像しています。東京で金を取るだけじゃなく、取り続けて内村さんが持っている記録を塗り替えたい。23歳のパリ五輪(24年)、27歳のロス五輪(28年)でも団体、個人総合を連覇したいと思っています。

 この金字塔へのプロセスも具体的だ。世界選手権の個人総合で優勝したニキータ・ナゴルニー(22=ロシア)の得点は88・772点で、SFを制覇した橋本は86・031点。約2・7点差を埋めるのは容易ではないが「目標は89点。Dスコア(演技価値点)で1・5上げて、Eスコア(出来栄え点)を各種目0・25ずつ合計1・5上げる」(橋本)と逆転プランを描く。今後は3月から始まる個人総合W杯で五輪出場一番乗りを目指し、代表選考レースでの“下克上”を狙っている。

 橋本:ロシアや中国の演技を見て、日本が取り残される嫌な感じがすごくあった。じゃあ、自分がエースになって変えないといけない。一番下から上の世代を刺激しないとダメ。それくらいの気持ちじゃないと負けてしまう。ボクは学校の勉強とか私生活ではそうでもないですが、体操になるとスイッチが入る。すごく負けず嫌いなんです。

 体操のみならず、他のスポーツ界でも若い世代が台頭。めまぐるしく世代交代が繰り広げられているが、サッカー日本代表のMF久保建英(18=マジョルカ)、プロ野球ロッテのドラフト1位ルーキー佐々木朗希投手(18=大船渡)とは同い年。競技を超えたライバルには少なからず刺激を受けているようだ。

 橋本:先日、テレビを見ていたら久保君が試合中にブーイングされていたんです。でも、久保君は「ブーイングは自分を認めている証し」って言った。それを聞いた瞬間、「同じ18歳じゃないな」って思いましたね。ブーイングをプラスに受け止め、そう言えるってすご過ぎる。人生の経験値は僕の10個くらい上でしょう。

 同世代のヒーローを語った後、少し悔しそうな表情を見せた。目指すはスポーツ界のキング・オブ・キング。その輝かしい栄光は東京五輪でスタートする。

【神田総監督「とにかく練習がしつこい」】市船橋高体操部・神田真司総監督(60)の話「とにかく練習がしつこい。まだやるのかってくらい、できるまで何度もやり続ける。いい意味で諦めが悪いね(笑い)。しつこさは今まで見た中で一番でしょうね。練習がうまくいかなかったときは夜、眠れないんじゃないかな。気持ちの強さは、そういう練習を見ていれば分かりますよ。まあ、特別なことは何もせず、今のままでいい。金メダルは厳しい戦いになりますが、底上げすればいい勝負はできる。仮にギリギリの戦いになったら地元がプラスになる。日本人の応援は勇気100倍ですからね」

☆はしもと・だいき=2001年8月7日生まれ。千葉・成田市出身。2人の兄の影響で6歳の時に体操を始め、佐原ジュニア体操クラブに入る。小学、中学時代はケガが多く、ジュニアでは目立たない存在。市船橋高に進学後、徐々に頭角を現し、19年世界選手権で白井健三以来の高校生代表入りを果たす。今春に順大へ進学予定。身長165センチ。