村上茉愛棄権で緊急事態の体操界 禁断の特例措置も

2019年05月18日 19時32分

涙を見せる村上茉愛

 体操界が緊急事態を迎えている。東京五輪の女子団体出場枠がかかる今秋の世界選手権(10月、ドイツ・シュツットガルト)の代表選考会を兼ねたNHK杯(武蔵野の森総合スポーツプラザ)が18日に開幕し、女子絶対エースの村上茉愛(22=日体大クラブ)は試合直前に両仙腸関節症のため棄権。これで先月の全日本選手権で予選敗退した体操界のキング内村航平(30=リンガーハット)に続き、世界選手権出場の可能性が絶望的となった。

 この日、村上は本番前練習の跳馬の着地で腰を痛めた。東京五輪を体操人生の“集大成”と位置づけるだけに今大会は「今年、一番大事な試合」と強い思いを抱いていたた。そのため瀬尾京子コーチとの話し合いは長時間にわたった。

「これがオリンピックだったらやらせるけど、まだ1年ある」という瀬尾コーチに、最終決断を自分で下すよう言われた村上は「今は自分の演技をする自信がありません」と棄権を決断。今大会優勝を飾った戦友の寺本明日香(23=ミキハウス)には「あとは任せた!」と言い、スタンドで仲間の応援に回った。

 試合後、村上は「なかなか諦められなかった」と涙ながらに語りつつ「1年間、終わったなという感じ」と、くしくも全日本惨敗直後の内村と同じセリフを吐いた。しかし、すぐに「逆に1年間、東京(五輪)のために、みんなより倍も練習できる。強くなりたい」と前を向いた。

 体操界にとっても痛手だ。田中光女子強化本部長(47)は「村上選手のネームバリュー、実力を考えると非常に厳しい」と沈痛な面持ちで語った。「どうしても団体枠を取りたい」という田中氏は、なんと〝禁断〟の特例設置の提案を示唆する。

 世界選手権代表枠は今大会上位4選手に加え、種目別の「スペシャル枠」の1人に与えられるものの「今大会12位以内」という縛りがある。村上は棄権により全ての条件を満たしていないが「例えば12位以内の条件を取り除き、今の点数をなしにして、種目別(6月)の点数を見て貢献度を見るとか」と私案を披露した。

 ただ、選考方法は公開されており「平等性とか透明性を考えると…」と頭を悩ませる同本部長だが、背に腹は代えられない。本部会で慎重に協議を重ね、来月8日の理事会に提案する可能性を明かした。

 昨年の同選手権銀メダリストという大黒柱を失った体操界。ようやく収束したパワハラ問題に続き、今度はルールを巡って混迷を極めそうだ。