体操・内村「予選落ち」収まらぬ衝撃 選手と“身内”は真逆の反応

2019年04月28日 16時30分

予選落ちした内村

“内村ショック”の余波が収まらない。体操男子個人総合で五輪2連覇の内村航平(30=リンガーハット)は10月の世界選手権(ドイツ・シュツットガルト)の代表選考会を兼ねた全日本選手権(群馬・高崎アリーナ)でまさかの予選落ちに終わったが、一夜明けた27日に行われた種目別トライアウトでも“キング落選”の波紋は広がるばかり。選手と所属先による正反対の反応から、関係者を巻き込んだドタバタ劇まで、一部始終をお届けする。

 体操界に与えた衝撃は、やはり一日で収まらなかった。惨敗直後、大勢のメディアに囲まれた内村は「失敗した時のほうが人が多いって嫌ですね」と苦笑いしたが、皮肉にも自身が不在の27日も話題の中心となった。

 この日は全日本種目別選手権(6月22~23日、高崎アリーナ)につながる「トライアウト」が行われたが、内村と同学年でリオ五輪団体金メダルメンバーの山室光史(30=コナミスポーツ)は試合後に「今までになく必死になる内村航平を見てみたい」と戦友らしくエール。同学年の亀山耕平(30=徳洲会)も「レジェンドですからね」としみじみ語った。複数の女子選手は「内村惨敗」を大きく報じたスポーツ紙に群がって試合以上に興味深く眺め、ある関係者は「急に引退会見なんてやらないよな?」と“万が一”を想定するなど、反響はすさまじかった。

 選手サイドは「あきらめるな!」の論調が強かったが、所属契約を結ぶ外食チェーン「リンガーハット」からは反対の声が相次いだ。ある男性社員は「これまで何度もケガから立ち上がってきた」と言いつつも「第一は内村さんの気持ち。この体の状況で絶対に東京五輪へ! なんて軽々しいことは言えない」と訴え、内村の地元、長崎・諫早市で勤務する女性社員は「とにかく体を大事に。今、辞めても功績は十分。ゆっくり休んでほしい気持ちもある」といたわった。五輪開催中も各媒体は内村の名前に「リンガーハット」を併記して全世界に発信するだけに、動向が気になるのは間違いない。

 極め付きはこの日に起きた“情報錯綜”だ。昼過ぎに内村の予選順位が「37」から「40」に変更になったことが公表された。日本体操協会関係者は「ルールが大変、複雑で…」と前置きしつつ、本来なら出場資格のない各大学推薦選手がこの日に全6種目を演技し「今回は順位に含めることにした」と説明。事前に知らされなかった報道陣は大慌てとなった。今回は大勢に影響なかったが、仮に内村が当落線上(上位30人が決勝進出)にいたら大騒動になっていただろう。

 ドタバタ劇の締めは、内村の世界選手権出場へのわずかな可能性に関する懸案だった。個人総合31位以下の選手およびトライアウト出場選手の中で、成績上位6人は28日の種目別決勝に進むことができる。内村は床運動で6位に滑り込んで“復活”する可能性が残されていた。午後6時前、首を長くした報道陣に対し、協会から発表された公式見解は「内村選手と加茂川(蒼天)選手は14・0点で同点ですが、Dスコアで上回る内村選手が6番目。ですが、左手の負傷により棄権届が提出されました」――。

 結局、内村の世界選手権出場へ残された可能性は全日本種目別選手権でシード権を持つ鉄棒次第となるが、得点が加味される26日の演技で失敗している上、そもそも今の体では厳しいだろう。

 それにしても朝から晩までスーツを着た大人たちが資料を手に走り回り、てんやわんや。関係者は「内村選手がこんな順位だとは想定していなかったから…」とポツリ本音を漏らしたが、すべてが内村の存在感、そして影響力の大きさの証明でもあった。