【体操全日本選手権】まさかの予選落ち・内村の東京五輪は夢と終わるのか

2019年04月27日 16時30分

予選落ちした内村

 体操界に衝撃が走った。10月の世界選手権(ドイツ・シュツットガルト)の代表選考会を兼ねた全日本選手権(群馬・高崎アリーナ)の男子個人総合予選が26日に行われ、同種目で五輪2連覇の内村航平(30=リンガーハット)がまさかの予選落ちを喫した。一昨年大会まで10連覇していた絶対王者の無残な姿にファンは悲鳴を上げ、関係者はぼうぜん。果たして来年の東京五輪は大丈夫なのか? 崖っ縁のキングが直面する「絶望」と「かすかな希望」に迫った――。

 これが本当に「キング」と呼ばれた内村なのか。スタンドで横断幕を掲げ、祈るように応援していた女性ファンは涙をためていた。

 目を疑う光景だった。前日から肩の痛みを訴えていた内村は、最初の床運動でラインオーバー。2種目目のあん馬では移動技で落下し、跳馬では着地できずに体勢を大きく崩した。

 電光掲示板に暫定順位が映し出されるたびに会場が騒がしくなる。5種目目の平行棒で、ざわつきは悲鳴に変わった。抱え込み2回宙返りの後に両腕で支持する「モリスエ」の衝撃で、この日2度目の落下。左肩周辺を押さえ、うずくまった。これを見ていた首位の谷川翔(20=順大)は「あの内村さんが…」とあぜん。キングに憧れ続けてきた高校生、北園丈琉(16=大阪・清風高)は「悲しい気持ちになりました」と漏らした。

 6種目合計80・232点で37位。上位30人による決勝(28日)に進めず、2005年以来の予選落ちだ。これにより、個人総合枠での世界選手権代表入りは消滅した。

 このふがいない結果に内村は「高校生、大学1年生の時の感覚」「自信が1ミリも出てこない」と表現。さらに「今日で1年のすべてが終わった」「練習ができる気持ちになれるかどうか」「今日をバネにできるかどうかすら分からない」と弱音を連発した。

 この異常事態に、当初は取材対応の予定がなかった監督、コーチも口を開く状況となった。佐藤寛朗コーチ(30)は「本人もまだ整理できていない」と話し、日本体操協会の水鳥寿思男子強化本部長(38)も「信じられない」と絶句した。
 こうなると、気になるのは内村の去就だ。試合後に発した言葉だけを聞くと「引退」の2文字すら漂ってくる。来年の東京五輪について聞かれると「夢物語」とまで口にし、もはや「五輪も絶望」という雰囲気に包まれている。

 それでも、キングにはまだ可能性はある。今回はあくまで世界選手権出場が絶望的になっただけで、東京五輪の代表選考とは直接は無関係。そもそも正式な五輪選考基準も発表されていない。来年の全日本選手権、NHK杯まで選考対象になるとみられ、その2大会で復活を遂げて結果も残せば、システム上は巻き返しが可能なのだ。

 実際、やや落ち着きを取り戻した取材終盤で、内村は「希望」を感じさせる言葉を残している。

「こうなったら死ぬ気でやるしかない。去年は厳しい中で代表になってしまったのがダメだった。早めに地獄を見ておけば良かった。こだわりを捨て、泥くさく練習する」

 絶望の中に見えている一筋の光。これで東京五輪への道をあきらめてしまうようなキングではない。