国内男子ゴルフの今季最終戦「日本シリーズJTカップ」最終日(3日、東京よみうりCC=パー70)、首位タイでスタートの宮里優作(37)が62で回り、通算15アンダーで今季4勝目。獲得賞金額を約1億8283万円とし、逆転で初の賞金王に輝いた。今年は宮里家にとって激動の1年だったが、重圧と逆境をはねのけて迎えたハッピーエンド。ホールアウト後に見せた涙と笑顔の裏にあった思いとは――。

 ホールアウトした瞬間、ガッツポーズをした優作の目には涙が浮かんだ。「1年が終わってホッとした解放感ですかね」。2011年の欧州女子ツアーで賞金女王になった妹の藍(32)に続き、きょうだいでのキング、クイーン戴冠となったが、その藍の引退など宮里家にとっては激動の1年だった。

「僕とは違うレベルの存在。超えることはない」という藍が引退を発表したのは5月。優作は新年早々、その決意を聞かされてシーズンに臨んだ。国内開幕3試合目の「中日クラウンズ」で早々と今季初V。その後もコンスタントに活躍を続けたが、今度は思いもよらないショッキングな出来事が起こった。

 8月、藍の試合に同行した父・優さん(71)が英国で倒れた。幸い、大事には至らず、この日も会場で戴冠がかかった優作のプレーを見守ったものの「まだ不安定なので」と報道陣への対応は短めだった。

 それでも優さんは「朝の練習場からスイングは良かった。まだまだ課題はあるが今年はショットが安定していた」と勝因を分析した。

 優作は「(自身の賞金王獲得が)特効薬になったと思います。まだまだ元気でボクのコーチをしてもらわないと」。賞金王になる姿を見せたいという思いがプレーの原動力となった。

 昨季から選手会長の重責も担っているが、任期中の賞金王は初の快挙。「大変だねと言われるのが嫌だった。選手会長がハズレくじみたいな感じは納得いかない。他の選手には『いいメンタルトレーニングになるよ』と言いたい。やってなければ、賞金王争いにも絡めなかった」。多忙な日々を力に変えた。

 優勝インタビューでは「僕のことだから何かやっちゃうかと思ったんですけど…。ハラハラさせなくてすみません(笑い)」。なかなか優勝できず、勝負弱さが目立っていた中で迎えた4年前の今大会では、16度目の最終日最終組でようやくツアー初V。思い出の大会に新たな記憶と記録が刻まれた。

 超えることはない、とした藍の存在だが「超えられるとしたらメジャーで勝つぐらい」と優作は話す。今回の優勝で世界ランクは50位台に浮上の見込み。年末時点で50位以内なら初の「マスターズ」(来年4月)出場が決まる。

 年内最終戦としてアジアツアー「インドネシアマスターズ」(14日~)に出場予定。祭典への出場権獲得、さらにその先の目標へ。優作の視線は宮里家の悲願に向けられた。