怪物がまた一つ成長を見せた。国内男子ツアー「ダンロップフェニックス」最終日(19日、宮崎・フェニックスCC=パー71)、8打差を追って6位からスタートした松山英樹(25=LEXUS)は69と伸ばし切れず、通算10アンダーの5位でフィニッシュ。それでも、ラウンド後の会見では次々に報道陣の笑いを誘い、新境地を開いた。初日から首位を走ったブルックス・ケプカ(27=米国)が20アンダーで大会連覇を果たした。

 スタートホールでバーディーを奪った松山は、3番パー3では日米を通じてツアーでは自身初のホールインワンを達成。追い上げムードを作ったものの、その勢いは続かなかった。

「5番からティーショットが悪くなった。1、2番が良かったので今日は行けるかなと思ったが、それを続ける力がなかった」。パー5の4番でバーディーを奪えず、6番パー3は3パットのボギー。奇跡の逆転Vの可能性は前半で消えた。

 それでも、ラウンド後はいつになく冗舌だった。取り組んでいるスイング改造について問われると「改造というと大げさで、自分にとってフィーリングが出しやすくするだけ。ちょっとした変化が大きな差につながっていくと思う」と解説。さらに「そのために球数を打たなきゃいけないので“1か月で2万球”ぐらい打とうかなと思います(笑い)」。同じくスイング改造中の石川遼(26=CASIO)の言葉を引用して周囲の笑いを誘った。

 また、予選ラウンドで同組だった尾崎将司(70=セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ)の話題に及ぶと「今のプレーを見てジャンボさんがどう感じているのか、聞きたいけど、聞く術がない。メディアの皆さんが聞いてくれると信じてます」。さらに来年も回りたいかを聞かれると「4年おきぐらいでいいです」と答え、これまで試合会場ではピリピリムードで取材に応じてきた松山が再び、会見場をどっと沸かせた。

 そんな松山の“異変”は会見場の外にも瞬く間に広がり、父・幹男さん(63)は「面白かったらしいね。明日の新聞読ませてもらうわ」とニヤリ。東北福祉大ゴルフ部阿部靖彦監督(55)は「そりゃ、いろいろ場数を踏んできてるんだから」と教え子の成長ぶりに目を細めた。

 トップアスリートにとってメディア対応は不可欠。そこにストレスを感じず、楽しめるぐらいの余裕があるとすれば、精神面では大きなプラスとなる。今季は国内1試合のみの出場となった松山は来季に向け「米ツアーのスケジュール次第で日本では1~2試合かもしれないし、余裕があれば、3~4試合出られるかもしれない」と語った。心技体ともに進化を続ける松山だけに、メジャー覇者として凱旋する日も遠くはないはずだ。