11日まで兵庫・六甲国際GCで行われた国内女子ツアー「サントリーレディス」は、宮里藍(31=サントリー)が今季限りでの引退を表明してから初の試合のため、記録的な盛り上がりを見せた。結局、藍は通算2アンダーの26位。優勝したキム・ハヌル(28=韓国)には13打差もつけられてしまったが、そのハヌルは最終日、藍のすごさに感心した。

「マナーがすごく良い選手。多くのギャラリーに囲まれていて、他の選手がプレーする時に止めてくれたりする」

 それは4番パー5のティーグラウンドでのことだった。前のホールでボギーを叩いた藍の打順は同組の3人で最後。だが、自分の順番になってもすぐに打とうとせず、しきりにティーグラウンドの真横にあたる方向を気にしていた。

 視線の数十メートル先には5番ホールのグリーンがあり、早い時間にスタートした組の選手がちょうどプレー中だった。ここで自分がティーショットを打つと「ナイスショット!」の歓声が起こり、大ギャラリーが一斉に歩きだしてパットに影響を与えてしまう。藍はそれを危惧していたのだった。

 藍の視線に気づいた5番グリーンの選手は身ぶりで「お先にどうぞ」と伝えた。選手の“格”でいえばはるか上の、藍のプレーを優先させようとしたわけだ。

 ところが藍は逆に「お先にどうぞ」の身ぶりをして、5番ホールの選手たちのパットの完了を待った。多くのギャラリーは気づかなかったであろう、さりげない気配り。スタート前から「感傷的になりそうでヤバくて、練習も手つかずだった」という精神状態にもかかわらず、こういうことがさらりとできる。それがハヌルの心に響いた。

 父の優さん(71)から「ゴルファーである前に一人の人間たれ」と教育された藍の人柄が表れたワンシーン。結果は不本意なものだったかもしれないが、順位では測れない印象をトップ選手たちに植えつけた大会でもあった。