ゴルフの国内女子ツアー「サントリーレディス」初日(8日、兵庫・六甲国際GC=パー72)、7アンダーで辻梨恵(23=大和証券)が首位に立ち、今季限りでの現役引退を表明した元世界ランキング1位の宮里藍(31=サントリー)は3バーディー、1ボギーと70のラウンドで22位発進だった。昨年比で観客数が倍増するなど大フィーバーとなったが、その舞台裏では、女子プロ選手が「厳重注意」処分を受けるなど、前代未聞の大騒動が勃発していた。

 突然の引退表明後、初めての試合。藍のスタートは午前8時24分。時おり強い雨が降っていたにもかかわらず、この時点で約2000人がつめかけた。最終ホール(9番)ではグリーン周りを埋めつくした大観衆に藍は「日曜日にしか見たことない景色が見られた」と笑顔を見せた。

 最終のギャラリー数は初日としては大会史上最多の6735人。入場制限する目安の8000人には届かなかったが、雨の早朝スタートという悪条件でも大盛況となった。主催者側は前売り券の販売を打ち切り。当日券も数に限りがあり、入場できない可能性があるという。決勝ラウンドの10、11日はともに1万2000人の来場を予想。主催者側は「2日目以降は早い段階で入場制限を実施するかもしれない」と異例の告知を出した。まさに「空前の藍フィーバー」が幕を開けた。

 しかし、その裏側では前代未聞のトラブルも発生していた。藍がホールアウト後、ファンにサインをしようとすると、数百人の観衆が一気に群がり、パニック状態に。5人ほどに書き終えたところで主催者側が危険と判断し、中止となった。それでもサインをもらおうとクラブハウス内の選手ロッカー内に突入しようとしたファンまで出現した。警備員に阻止されると、今度は帰路につく藍が乗り込んだ車にまで突進。「ロッカー侵入未遂」に続く行為とあって制止しようとする大会関係者ともみ合いになるなど、一部ファンの暴走は目に余るものがあった。

 一般ギャラリーの立ち入りが禁止されているクラブハウスでなぜ“事件”が起きたのか。実は、男性ファンは「ファミリーバッジ」を着用していたからだ。大会側が出場選手に対して2枚ずつ発行しているもの。本来は親や兄弟、配偶者など、選手が家族とクラブハウス内で一緒に過ごすための通行証だ。

 だが今回のケースでは、ある出場選手がバッジを渡した「知り合い」が藍への蛮行に及んだという。これもプロとして管理能力が求められる選手の責任とあって、女子ツアーサイドは、当該選手を「厳重注意」。本来は選手の“身内”が絶対にしてはならないこと。そんな常識外のことが起きてしまうほどのフィーバーぶりだった。

 藍はラウンド後に「ショットの距離感がまちまちだったので修正したい」との課題を挙げた一方で、パットは前戦の「中京テレビ――」で6連続バーディーを奪って6位になった好調を維持している。時代をつくったスーパースターは2日目以降に向け「自分のできること、目の前の一打一打を積み重ねていくだけ。集中して、エネルギーを効率よく使うようにしたい」と話した。

 今後の活躍によっては週末にさらなる盛り上がりは必至。フィナーレに向けて突き進む藍を困惑させるようなトラブルは起きないようにしてほしいものだ。