現在、日本で最も人気のあるプロゴルファーといえばこの人だろう。国内女子ツアーで2年連続賞金女王となったイ・ボミ(28=韓国)だ。圧倒的な実力と抜群のルックスで“国内ゴルフの顔”となった女王が、本間ゴルフ酒田工場(山形・酒田市)で本紙の単独インタビューに応じ、「つらかった」と振り返った今シーズンやファンに愛される理由、さらには注目の結婚観について語った。「スマイルキャンディ」の本音とは――。

 今季は2位に約3000万円差をつけて2年連続の女王に。そのシーズンをこう振り返った。

 ボミ:人生で2度も賞金女王になるのは難しいこと。私も頑張ったけど、支えてくれたチーム皆の力だと思います。去年よりいい成績を期待されるプレッシャーがありました。後半は2か月ぐらい優勝できなくて「スランプ」みたいに言われたり。私はトップ5でもいい成績だと思っているけど「何で勝てないんですか?」と言われてしまうと…。

 昨年は男女通じて日本ゴルフ史上最高額となる2億3000万円余りを獲得して初の賞金女王に。ファン心理、応援する気持ちとはいえ、それ以上の成績を求められ、2位でも「勝てなかった」と言われることが尋常ではないプレッシャーとなり「つらい」となった。

 その重圧が来年も、となれば気がかりなところ。それでも最強女王は明るい表情で話す。

 ボミ:いいことだけを考えて、前向き、前向きにしていけたらいいと思います。(プレッシャーは)全然、心配しなくていいですよ。私は本当にゴルフが好きで、どうしたらスイングがきれいになるか、いい感じで(ボールに)当たるかをいつも考えています。そのために練習するのが楽しいです。

 一方で、身長は158センチ。体格的には決して恵まれていないにもかかわらず、無類の強さを誇る秘密はどこにあるのか。

 ボミ:韓国の先輩、金美賢(キム・ミヒュン=39)さんや張晶(ジョン・ジャン=36)さんがすごくうまくて、米ツアーでいいプレーをしているのを見て、私も小さくてもできる、と思ってやってきた。希望を持ってプレーするのは、すごく大事です。

 名前を挙げた2人はいずれも身長150センチ台だが、米ツアーで優勝。その先人たちを見習って努力を続けた。そして、日本で最も人気のあるゴルファーになった陰にも「お手本」がいた。

 ボミ:宮里藍(31=サントリー)ちゃんです。いい選手というよりも、本当に「いい人」だと思いました。尊敬します。誰にでもやさしくて、それが自然なんですよね。私はまだまだだと思います。

 女王は11月の「伊藤園レディス」で日本ツアー通算20勝目を挙げ、いよいよ30勝での永久シードが見えてきた。

 ボミ:でも私は「会員」じゃないから、30勝してもダメじゃないですか?

 日本の女子プロゴルファーはプロテストに合格した「会員」と、ボミのようにQTでツアー出場資格を得た「TPD単年登録者」に分かれる。これまで永久シードは会員のみを対象にした制度とされてきたが、日本女子プロゴルフ協会は単年登録者でも30勝すれば永久シードの資格を得られる、との見解を明らかにしている(本紙既報)。

 ボミ:それはいいですね! 永久シードがあれば「引退」のことを考えなくてよくなるから、もっといいプレーができるようになると思います。

 ここでの「引退」とは自ら競技人生にピリオドを打つのではなく、シード権を失うこと。現状ではシードを失うことなど想像できないが、永久シードを取ると「出場義務試合数」「2年連続同一大会欠場の罰金」「前年V大会への出場義務」の縛りがすべてなくなり、より強さを発揮できる日程を組めるようになる。今後は30勝へ向け、さらに勝ち星を重ねるというゴルフの目標は明確になった。そうなると、世の男性ファンが気になるのは結婚についてだ。

 ボミ:毎回、聞かれますね(笑い)。年(28歳)だからですか? 相手の人もいないし、まだ結婚したいとは思いません。人(恋人)に会うと、ちょっとのことが大きくなってケンカになったりする。そうなるとゴルフにも影響が出てしまうと思うんです。今はゴルフを頑張って、縁があれば、その時に…。

 最後に2017年の抱負をこう語った。

 ボミ:スポーツ選手はいい成績を出すのが一番大事。優勝のため、いい成績のために一生懸命しますから、集中する姿を見てください。

☆イ・ボミ=1988年8月21日生まれ。韓国・水原市出身。建国大学校卒業。所属は延田グループ。12歳からゴルフを始め、2007年にプロ転向。10年には韓国女子ツアーの賞金女王となり、翌年に日本ツアーデビュー。12年の「PRGRレディス」で日本初Vを飾った。日本ツアーは通算20勝。愛称は「スマイルキャンディ」。158センチ、56キロ。