ニューヒロインの行く末は――。女子ゴルフの国内メジャー第3戦「日本女子オープン」最終日(2日、栃木・烏山城CC=パー71)、首位と4打差の5位から出たアマチュアの畑岡奈紗(17=茨城・ルネサンス高3年)が68をマークし、通算4アンダーで逆転優勝を果たした。アマチュアのメジャーVは史上初の快挙。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長(53)は「10年、20年、いや30年に一人の逸材」と手放しの喜びようだが、皮肉にも日本でプレーする姿は来年以降、激減する可能性が高まっている。

 歴史に残る快挙だった。17歳263日での優勝は畑岡も憧れる宮里藍(31=サントリー)の20歳105日を大幅に更新する大会最年少記録。ツアーでも史上3番目の年少記録となった。

 とはいえ、その姿は17歳の高校生とは思えないほど堂々としたもの。勝負を分けた池が絡む上がり2ホールで見せたプレーは圧巻だった。

 ツアー最長490ヤードの17番パー4では、残り210ヤードからの2打目を4Wでピン奥4メートルにつけてパーセーブ。最終18番パー4では奥から下りの4メートルのバーディーパットを沈めて、何度もガッツポーズを繰り返した。

 一方、4アンダーで首位に立って17番を迎えた後続の堀琴音(20=東芝)は、2打目を池の手前に刻んだ結果、痛恨のボギー。「パッティングや小技は苦手だけど、ショットでガンガン、ピンを攻めるのが自分の特長だと思っています」(畑岡)。その言葉通り、積極的に攻めた畑岡に軍配が上がった。

 この優勝により、畑岡は1年間のツアー出場資格を獲得。この権利を行使するためには21日までにLPGAに単年登録を申請し、承認を受けなければならない。規則に細かな変更は加えられているが、藍もこのルートでプロに転向した。

 ただし、畑岡は米女子ツアーの来季出場権をかけた予選会(QT)に参加中。すでに1次を突破しており「出場権が取れたら1年間は向こうでプレーするつもりでした」。来年のプロテストも受験しない意向だった。

 今大会でキャディーを務めた母の博美さん(46)、父の仁一さん(51)もあまりの急展開に「考えていなかったことなので、これから周囲の皆さんとも話し合いたい」と困惑気味。米国の2次QT(20~23日)の結果が出る前に申請の締め切りを迎えるだけに、今回の登録は見送る可能性も十分にある。となれば、その視線の先にあるのは米ツアー参戦ということになり、今後の日本ツアーへの対応もおのずとわかってくる。

 畑岡の快挙達成の原点は2年前の「日本ジュニア」だった。2位に6打差をつけて首位で最終日を迎えたが、75と崩れて勝みなみ(18=鹿児島高3年)に逆転を許した。

「会場で泣いて、帰りの車で泣いて、家に着いても泣いて、涙ってこんなに出るのかというぐらい泣いていた。あれからすべてが変わった。今思えば、負けて良かったのかもしれない」(仁一さん)

 それまで以上にゴルフに打ち込み、最強世代と呼ばれる同い年のライバルたちも果たせていないメジャーVという偉業を成し遂げた。

 前人未到のことを成し遂げてほしい――。米航空宇宙局(NASA)から取った名に込められた両親の思いを早々と実現させた畑岡は「米国でもすぐに覚えてもらえる。いい名前をもらったと思っています」。将来の目標は「全米女子オープン優勝と東京五輪の金メダル」。今週の「スタンレーレディス」(7日~、静岡・東名CC)には出場予定のニューヒロインだが、その視線はすでに世界に向けられている。

☆はたおか・なさ=1999年1月13日生まれ。茨城県出身。ゴルフ場勤務の母・博美さんの影響で、11歳でゴルフを始めた。14年「日本ジュニア選手権」2位。15年から「世界ジュニア選手権」を2連覇。ツアーでは昨秋「樋口久子Pontaレディス」で7位に入った。ドライバーの飛距離は約250ヤード。158センチ。