男子ゴルフの今季メジャー第3戦「全英オープン」は、聖地セントアンドリューズで16日に開幕する。松山英樹(23=LEXUS)はいよいよメジャー初制覇となるのか? ジョーダン・スピース(21=米国)が年間グランドスラムへメジャー3連勝を果たすのか? 2002年大会で1打差の5位と日本人初制覇にあと一歩と迫った丸山茂樹(45=セガサミーHD)が「自然との闘い」と呼ばれる最古のメジャーを徹底分析。松山に聖地攻略の“2つのカギ”をレクチャーした。

「米国の試合とはコースが180度、違うんですよ。競馬で言えば、芝とダートぐらい。テニスだって米国ではハードコートが主流だけど、ウィンブルドンは芝でしょ? 『全英オープン』は年に1回、特殊な競技をするような感じで受け止めていました」

 メジャーの中でも異質なのがこの大会。選手の立場から丸山はこう解説する。硬いフェアウエーにフェスキュー芝の深いラフ、一日の中に四季があると言われるほど、天候は目まぐるしく変化し、選手たちを苦しめる。それだけに、必要とされるのはコースマネジメント能力だ。

「『全米オープン』などのメジャーも含めて、米ツアーの試合ではすごいショットを打ち続けないと勝てないけど、全英はそうじゃない。例えば、セントアンドリューズの17番(パー4)はナイスショットがポロッと、グリーン手前のバンカーに入れば、『7』にも『8』にもなる。反対にミスショットが出たとしても、バンカーに入らなければ、パーを拾える可能性は十分にある」

 セントアンドリューズは飛距離を求められるわけでもなく、コースマネジメントにたけたベテラン有利というのが丸山の見立て。ただし、その一方で若手に有利な要素もある。

「急にくる寒さはベテランになるほどつらいんです。そんな中でも、半袖のまま、ガンガンやれちゃう選手もいる。体が若くてフレッシュなんでしょうね」

 マネジメント能力と若さという2つのポイントを兼ね備えている選手…松山はもちろんその一人だ。

「松山はもうコースの向き不向きとかは関係ないレベル。2~3試合に一回、本当にいいショットをしている。ボクは年に一回、半年に一回がいつくるかって感じだったけど(笑い)。マネジメントもしっかりして、ケガの少ないゴルフをしているし、普通にやれば20位以内には入る。ちょっと調子が良ければトップ10、パットが入れば優勝争いの可能性がある」

 ただし、問題はそのパッティングだ。18位に終わった6月の「全米オープン」ではグリーン上で苦戦し、V争いには絡めなかった。
「『全米オープン』のチェンバーズベイGCとグリーンは似ていると思いますよ。そういう意味ではまた苦しむのかな? 普段は公園みたいに開放されていて、犬を連れて散歩してる人がグリーン上も平気で歩いてる。大会のために整備したって感じがしない唯一のコース。ヒデキも“エッ”と思うだろうね」

 その戸惑いがなければ、あるいは練習ラウンドのうちに解消されれば、丸山があと一歩に迫った「全英オープン」日本人初制覇も見えてくる。

「セントアンドリューズでは徹底してバンカーを避けることが大事。右サイドにバンカーが多いから、左に打てという意味で“キープレフト”という言葉があるんです。攻める時も、守る時も、それを最後まで貫けた選手が勝つんでしょうね」

 松山はもはや誰もが認める優勝候補の一人。「グリーン攻略」と「キープレフト」がVのカギを握っている。

☆まるやま・しげき=1969年9月12日生まれ。千葉県出身。日本大学を経て92年プロ入り。93年には「ペプシ宇部興産」でプロ初優勝を飾った。2000年から本格参戦した米ツアーでも2年目の「ミルウォーキー・オープン」で初優勝。日本人男子最多の3勝を挙げている。02年「全英オープン」では優勝に1打差の5位と日本人男子初のメジャー制覇に迫った。現在は左手親指の慢性亜脱臼と闘いながら、ツアーにスポット参戦。ジュニア育成にも力を入れている。169センチ、73キロ。