渋野日向子の〝完全復活〟を大歓迎と言い切れない国内女子ゴルフ界の事情

2021年11月01日 05時15分

渋野は「面白いゴルフ」でより高い舞台を目指す(東スポWeb)
渋野は「面白いゴルフ」でより高い舞台を目指す(東スポWeb)

〝スター流出〟の影響は――。国内女子ゴルフの「樋口久子 三菱電機レディス」最終日(31日、埼玉・武蔵丘GC=パー72)、70で回った渋野日向子(22=サントリー)が、通算9アンダーで並んだペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフ(PO)を制して今季2勝目(通算7勝)を挙げた。完全復活を印象付ける勝利で12月に控える米ツアー最終予選会へ弾みをつけたが、このステップアップを巡っては歓迎ムードばかりではない。いったい、どんな事情があるのだろうか。

 劇的な勝利だった。首位のペと2打差で迎えた最終18番パー5でバーディーを奪取し、3パットのボギーを叩いた相手に追いついた。PO(18番の繰り返し)1ホール目では2オンに成功させるイーグルでケリをつけた。今季初優勝を飾った「スタンレーレディス」では涙を見せたが、この日は笑顔のガッツポーズ。グリーン脇では、仲良しの大里桃子(23=伊藤園)と歓喜のハグを交わした。

 正規の18ホールでも、突き放したかと思えば逆転される中で勝利をつかんだ渋野は「今年の米ツアーで何試合か出場して面白いゴルファーになりたいと思った。今日みたいにハラハラドキドキするような面白い勝ち方ができてうれしかった」と喜びを語った。6月の海外メジャー「全米女子プロ選手権」2日目にバーディー、イーグルで上がって劇的な予選通過を果たしたときに「見ていて面白いゴルフをしてくれてありがとう」と日本人ギャラリーに言われ「面白いゴルファー」に目覚めたという。

 まさに見る者を楽しませる女子ゴルフ界の〝千両役者〟は、12月に米ツアー最終予選会を控える。計8ラウンドの長丁場をパスすれば、来季から米ツアーが主戦場となる。本格参戦で2019年「AIG全英女子オープン」に続く日本人初の海外メジャー2勝目の期待も高まるが、国内ゴルフ界に目を向ければ、全面的な歓迎とは言い切れない。ツアー関係者は「協会(日本女子プロゴルフ協会=JLPGA)は痛いでしょうね」と指摘。というのもJLPGAは来季から放映権を自前で管理し、インターネット配信業者への販売を目指しているからだ。

 JLPGAとしては、Jリーグが17年に映像配信サービス「DAZN(ダゾーン)」と10年総額2100億円(20年に12年総額2239億円に改定)の巨額契約を結んだ前例も踏まえ、できるだけ高い金額で配信業者と契約したい意向がある。そんな将来を見据えると、コンテンツの価値を左右する看板選手の有無には敏感にならざるを得ない。しかも今年の米ツアー最終予選会には古江彩佳(富士通)、来年は勝みなみ(明治安田生命)や原英莉花(日本通運)らも受験を目指しており、今後の国内空洞化も懸念されるだけになおさらだ。

 一方で、来年の国内ツアー主催者の間では〝渋野争奪戦〟が繰り広げられそうだ。前出のツアー関係者は「予選会の結果が出てから具体的になるでしょうけど、渋野選手が米国へ行ったとしても、どこかのタイミングで国内スポット参戦の可能性があるかどうか探ろうとする動きがある」と明かした。今大会のように渋野が大会の盛り上がりを左右する状況では、自然な流れだろう。今季最終戦「JLPGAツアー選手権リコーカップ」(25日開幕)は、米ツアー最終予選会に備えて欠場。想定内とはいえ、大会関係者から落胆の声も漏れている。

 渋野本人もこれらの事情は理解しているだろうが、より高い舞台を目指すのはトップアスリートの本能。周囲の疑問を意に介さずスイング改造を貫いたように、己の信じた道を突き進むはずだ。

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