男子ゴルフの国内ツアー最終戦「日本シリーズJTカップ」初日(4日、東京よみうりCC=パー70)、賞金ランクトップの小田孔明(36)が64をマークし、6アンダーで首位に立った。賞金王の可能性を残す4人の中でも、栄冠への思いは人一倍。なりふり構わず初の賞金王を目指す裏には、大きな理由があった。

「もう早く終わってほしい。朝から嫌だなあと思っていた」と不安と緊張感に包まれてスタートした小田だったが、終わってみれば2位に2打差の単独首位。初の賞金王獲得に向けて絶好の滑り出しを見せた。

 今大会のテーマに「我慢」を掲げた通り、5番までパーを重ねると、6番パー5で23メートルの超ロングパットを沈めてイーグル奪取。「早くバーディーが欲しかった。もちろん、狙ってなんかない。寄せて2パットと思っていた」。気持ちが落ち着いた後半はバーディーラッシュ。13番パー4で第2打を50センチにつけるなど、ベタピン連続で4つのバーディーを積み重ねた。

 自身のプレーは好調だが“根回し”にも抜かりはない。ライバルの3人はいずれも優勝が絶対条件。その他の選手が優勝すれば小田の賞金王が確定するだけに、ちょっとした“買収工作”も進めている。ロッカールームでは「賞金王になったら飯をおごるから」と周囲の選手に声を掛けまくり、奮起を促しているというのだ。

 小田がここまで賞金王にこだわるのは「年を取ったら地元(福岡・田川市)に戻って子供たちを教えたい」という夢があるからだ。「そこから強い選手が出て、五輪で金メダルを取ったら最高じゃないですか」

 現在でもツアー8勝と十分な実績があるが「賞金王とか、メジャー優勝とかじゃないと子供は言うこと聞きませんよ。オレもプロコーチとかつけてないでしょ。自分より下手なヤツに教わりたくないもん」。誰もが納得する分かりやすい肩書が欲しいというわけだ。

 キングになれば華やかなオフも待っている。契約メーカーの本間ゴルフでは今月中旬に酒田工場(山形)で行う、来季に向けたクラブフィッティングの際に「祝賀会を計画しています」(同社ツアー担当)。テレビ出演など、各方面からオファーが殺到するのも間違いない。

「このまま終わる3人じゃない」とライバルを警戒しつつも「もっとスコアを伸ばしたい。そうすれば、みんな焦ると思う」。夢の実現に向け、賞金王のタイトルは絶対に逃せない。