無名の女子高生が世界をあっと驚かせるか――。ゴルフの海外メジャー「全米女子オープン」(6月3~6日、カリフォルニア州オリンピックC)にアマチュアの小暮千広(17=茨城・明秀学園日立高3年)が出場する。1日36ホールで争われた日本地区最終予選(4月26日、神奈川・横浜CC)では、プレーオフの末、出場権を得られる上位5人に滑り込んだ。自らを「強運」と認めるシンデレラガールを独占直撃した。

 ――ゴルフを始めたきっかけは

 小暮 幼稚園の年長だったときに姉(広海さん)と一緒に父(広宣さん)に練習場へ連れて行ってもらったことです。遊び感覚ですごく楽しかったことを覚えています。本格的に始めたのは小4のときにジュニアスクールに入ってから。

 ――父・広宣さんにはどんな指導を受けたか

 小暮 練習場や試合に送り迎えしてもらって、試合で結果が悪かったときは怒られたりはしないけど、帰りの車の中では反省会でした。落ち込んでいるときでも「もっと練習しないと変わらないよ」とか言われて。正直、嫌な気持ちはあったけど、中3になると言われたことを素直に受け止められるようになった。父はずっと身近にいてくれる存在で「ちょっとアドレスが開いているのでは」とか指摘してくれたりして感謝しかないです。

 ――これまでの最高成績は

 小暮 昨年12月の関東高等学校ゴルフ選手権冬季大会決勝の2位タイです。直近では今年4月にLPGAステップアップツアーの「フンドーキンレディース」に出場して16位タイでしたが、ベストアマチュアを獲れました。

 ――「全米女子オープン」の日本地区最終予選にエントリーした理由

 小暮 1日36ホールで良ければ一発でメジャー大会に出られるのはすごいチャンスだと思ったので。とにかく36ホール頑張ろうと。途中で成績表も確認せずに順位は意識していなかった。ミスしても落ち込まずに最後までやり抜けた。全然周りを気にしていなかったので、それが逆に良かったのかもしれません。

 ――最後は切符2枚となり、勝みなみ、築山栗子との三つ巴のプレーオフの末、勝とともに出場権を手にした瞬間は

 小暮 「やったー!」という感じ。信じられないというか、本当にうれしかった。今でも「全米女子オープン」に行けるなんて実感が全然わかないです。頑張ったのはあったけど、強運だなと思う。

 ――感謝している人は

 小暮 最終予選でキャディーをしていただいた平川陸斗さんです。法政大4年のゴルフ部の方なんですが、プロテストを受けている姉と同じ新潟の開志国際高校出身の1つ先輩で、いろいろ助けてもらい「全米女子オープン」に導いてくださって本当に感謝しています。

 ――海外経験は

 小暮 旅行で行ったロサンゼルス、ハワイ、タイではラウンドしたことがあるけど、試合はないです。

 ――オリンピッククラブは米国屈指の難コースで有名だが

 小暮 ネットで見ると難コースと出てくるけど、嫌だなというのは全然なくて楽しみしかない。素晴らしいコースでプレーができるし、海外で有名プレーヤーを見られることにわくわくする。家族、コーチも一緒に行ってくれるので不安はないです。

 ――「全米女子」のキャディーは

 小暮 松田鈴英プロを指導していてジュニアゴルフ時代に松山英樹さん、石川遼さんと戦ってきた黒宮幹人コーチにお願いしたので心強いです。今年1月に鹿児島・薩摩郡で黒宮コーチ主催の合宿に参加しましたが福山恵梨プロ、吉野茜プロも一緒でとても有意義でした。

 ――「全米女子オープン」ではどんな経験をしたい

 小暮 世界トップレベルの方々と一緒に回れるので、普段見られないようなレベルの高いプレーを見たり、自分が少しでも上達できてプロゴルファーになれるように吸収してきたいです。

 ――ポジティブな性格

 小暮 高校に入って成績が悪いときにネガティブに考えてしまったこともあったけど、そういう考えをやめた。自分にやさしく、許せるようになってからはプラスなことだけを考えられるようになった。ずっと全国大会に行けなくて、それが自分の試練や壁と考えていたけど、今できることをやればいいと前向きに考えるようになりました。

 ――そうしたら海外メジャー出場をつかめた

 小暮 ホップ、ステップ、ジャンプのステップを飛ばしまくりましたね(笑い)。全国大会にも行ったことがなかった私が「全米女子オープン」に出られるなんて、自信にはなるけど、実力というより、ご褒美を神様からもらえたという感じです。

 ――課題は

 小暮 パターです。結構、強気に打ってしまう方で安定したストロークに欠けている。でも嫌いではなく、すごく好きなので一番伸びしろはあると思っています。

 ――松山英樹が「マスターズ」を制覇したが

 小暮 アジア人初の快挙だったので本当にすごい、かっこいいなと。実は私が小5のときに松山さんが地元千葉の練習場に来ていてお会いしたことがあります。サインをもらったり、記念写真も撮ってもらえました。

 ――「全英女子オープン」を制覇している渋野日向子の印象は

 小暮 私と年が5つしか変わらず若いのにすごいですよね。渋野さんが「全英」を勝ったときの試合をテレビで見ていて、池があるパー4をドライバーでワンオンを狙ったり、最後のウイニングパットも強気で打っていたので、上だけを見て戦っていて、すごく心が強い選手だなと思いました。

 ――「全米女子オープン」で優勝すれば日本人女子3人目の偉業となるが

 小暮 私が!? そんなことは考えられませんね。でも可能性は無限大なので絶対無理だとは思わない。もし優勝できたら宇宙や世界が何周もしてしまうのでは(笑い)。頑張ってきます。

☆こぐれ・ちひろ=2003年5月28日生まれ。千葉県出身。茨城・明秀学園日立高3年。身長160・6センチ。血液型=O。家族は父・広宣(ひろのり)さん、母・三千代(みちよ)さん、姉・広海(ひろみ)さん、妹・三千(みち)さん。得意なクラブはドライバー(飛距離約240ヤード)。好きな食べ物は「肉」で焼き肉、しゃぶしゃぶ、ステーキなど。ご飯は大盛り3杯をペロリ。趣味はディズニーランド&シーへ行くことで現在ハマっているキャラクターはダンボ。お気に入りの曲はAIの「I’m The Champion」。好きな芸能人は竹内涼真。座右の銘は「私はできる!」。憧れのプロゴルファーは小祝さくら。