ゴルフ界の重鎮は快挙をどう見たのか――。国内男子ツアーを統括する日本ゴルフツアー機構(JGTO)元会長の小泉直氏(82=現JGTO顧問)が、日本人初の海外メジャー優勝となる「マスターズ」制覇を果たした松山英樹(29=LEXUS)の勝因を独自の視点で分析した。

 アマチュア時代から松山を知る小泉氏は、JGTO会長時代(2008~12年)には現地で「マスターズ」のプレーを見守った。今回の大仕事には「苦節10年じゃないけど、ちょうど10回目の出場。その間の苦労は大変なものがあったと思う。ゴルフで必要なのは集中力と決断力と自制心と言われるが、それに彼は耐える力を持っている。あと練習量は世界でナンバーワンだし、それを続ければ35歳くらいまでは強いままでいられる」と、しみじみ語った。

 その上で今年から目沢秀憲コーチをつけたことに注目した。「どんなコーチの方かわからない」と前置きした上で「コーチをつけたことは非常にプラス。今度のコーチが的確な指摘をして、これがゴルフに対する安心感を構築している。ゴルフは自分の殻に閉じこもると、良い悪いがわからなくなる。(女子ゴルフの)渋野日向子はあれだけ活躍した以前のコーチから離れて難しい状況になっているでしょ」。

 直接のアドバイスを受けられないラウンド中にもコーチの効果が感じられたという。「コーチがいることで精神的に余裕を持てている。プレー中に彼は慌てなくなった。テレビで見ててもものすごくわかるし、気にすることもない。3パットの後も引きずることはなくなった。あくまで想像ではあるが、パッティングがうまいコーチなのかもしれない」

 さらにペアリングの恩恵も最大限に受けた。65で回った3日目に続き、最終日同組だったのはザンダー・シャウフェレ(27=米国)だっただけに「シャウフェレのタイミングは松山と合っている。(ジョン)ラームみたいな飛ばし屋でスイングが速いと、他人に惑わされない松山とはいえ、どこかでつられてしまうかもしれない。そういう意味ではよかった」。シャウフェレは日本育ちの台湾人を母に持ち、片言の日本語も理解でき、リラックスムードでラウンドできたことも功を奏したわけだ。

 謙虚な気持ちも重要なポイントだった。11年のローリー・マキロイ(31=英国)が2位と4打差で迎えた最終日に80を叩いてV逸したことを引き合いに「マキロイは優勝を逃した後に『自分のゴルフにおごりがあった』と言っていたが、松山にそれは感じなかった」と指摘。グリーンジャケットに袖を通すまで、ひたむきにゴルフと向き合ってきた“結晶”が、悲願達成につながったと言えそうだ。