涙の裏には――。女子ゴルフの国内ツアー「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」最終日(29日、宮城・利府GC=パー72)、4位スタートの柏原明日架(23=富士通)が68をマーク、通算10アンダーで悲願の初優勝を果たした。2014年8月のプロ入りから丸5年。どうしても届かなかった初Vへのあと一歩を乗り越えられた要因には、いくつもの「自己改革」があった。

 2打リードで迎えた18番パー5、柏原は震える手で2メートルのパーパットを沈めると、何度もガッツポーズ。「優勝しても泣かないと思っていた」という想像とは違い、サングラスの奥の瞳からは涙があふれ出た。

 自己改革の第一歩はシェイプアップ。「昨年までオフに無理にでも食べて体重を増やしていたけど、シーズン中に体重が減ってしまっていた。結果的に体重が減った秋のほうが調子がいいので、今年はその体重をキープすることにしました」(柏原)。ピークからは約10キロ減らして、今季は「60キロぐらい」をキープしている。

 勝てる選手は何を考えてプレーしているのか――。初Vへのヒントをつかむため、他の選手の優勝記事に目を通すようになった。柏原は2015年の「日本女子オープン」で終盤の17番パー3で左の池に打ち込み、トリプルボギーで初Vを逃した(4位)のが一種のトラウマ。「左に池があると反応してしまう」と悪いイメージが焼きついている。

 次々に初優勝を飾る黄金世代を中心にした年下の選手は「自信があって、私のようなマイナスイメージは持ってないと思っていた」。それを変えたのは渋野日向子(20=RSK山陽放送)の記事だという。「渋野さんはネガティブなことも言っているので、コントロールがうまいんだなと思った」。この日は15番パー3で同じような状況を迎えたが、7Iを振り抜き「これで勝てる」と手応えをつかんだ。

 なぜ私は勝てないのか? 大山志保(42=大和ハウス工業)、上田桃子(33=かんぽ生命)、アン・ソンジュ(32=韓国)ら先輩プロに助言を求めた。「アンさんには昨年の秋に泣かされました(笑い)。私の悩みを全部見透かされてしまうので。今年は大山さんに『初優勝の早さより、生涯で何勝できるかを考えたほうがいい』と言われたのが大きかったと思います」。歴代賞金女王の言葉で、初Vへの焦りは薄れ、目の前の課題に集中できるようになった。

 日々、若手が台頭する「この世界にいると自分が若いとは思えない」と笑ったが、大器の柏原もまだ23歳。ここから勝利を積み重ねていく。