ニューヒロインが誕生! 女子ゴルフの国内ツアー「CATレディース」最終日(19日、神奈川・大箱根CC=パー73)、首位から出た「黄金世代」の一人、大里桃子(20)が3バーディー、3ボギーの73で回り、通算10アンダーでツアー初優勝を挙げた。2度目の挑戦となった7月のプロテストでの合格からわずか23日で初優勝。プロテスト合格前に優勝した選手を除くと最速での優勝になった“シンデレラガール”の素顔とは――。

「こんな下手くそなのに優勝しちゃっていいのかなという感じでした」。1打リードで迎えた18番パー5、残り105ヤードからの第3打を20センチにつけた大里はウイニングパットを待つ間の心境をこう振り返った。優勝会見では「下手くそ」という言葉を連発。「ショットは曲がるし、アプローチは下手くそだし、パターは入らないし、未熟だし、もっともっと練習して、2勝目をできるようなゴルフをしたい」と謙虚に今後を見据えた。

 1998年生まれの「黄金世代」の一人だが、アマチュア時代は勝みなみ(20=明治安田生命)、新垣比菜(19=ダイキン工業)らの陰に隠れた存在だった。「みなみは特に雲の上の存在。小学生のころは1日で10打離されるぐらいレベルが違った」。高校1年で勝がアマチュアVを果たした際には、会場でボランティアをしていたという。「見ていて燃えてきたというか、負けてらんねえなって感じでした」(大里)

 元体育教師でゴルフはハンディ0、キャディー、コーチを務める父の充さん(52)と「プロになってからが勝負」を合言葉に、着実に力をつけてきた。歓喜の涙がなかったのも父親の影響だ。「子供のころから勝っても負けても、ゴルフ場では泣くなと教えてきました。悔しさは持ち帰って練習で泣かないとうまくならない」(充さん)。この日のラウンド中にも「泣くなよ」と声をかけたという。

 唯一の例外は昨年のプロテスト。勝ら多くの同世代が合格する中で1打及ばず、このときばかりは悔し涙を流した。それだけに今年の合格は大きな転機となった。昨年末のQT(予選会)16位の資格で出場したシーズン序盤は予選落ちを重ねたが、合格以降は3戦連続で予選を通過。先週は初日にホールインワン、そして今大会はプロテスト合格後最速の初優勝だ。

 3年前に仕事を辞め、娘のサポートに専念する充さんは「スイングにクセがないし、体育教師をやってきた目で将来性があると思った」と今後の活躍にも自信を見せる。身長170センチと体格にも恵まれているだけに「負けず嫌い」(充さん)というシンデレラガールが黄金世代を引っ張る存在になるかもしれない。