「忖度せず」の初Vだ。男子ゴルフの国内メジャー第2戦「日本ツアー選手権森ビル杯」最終日(3日、茨城・宍戸ヒルズCC西C=パー71)、5打差を追ってスタートした市原弘大(36)が66をマーク、通算12アンダーとスコアを伸ばし、逆転でツアー初優勝を飾った。ツアーきっての律義男の悲願達成の裏にはいったい、何があったのか?

 自称「面倒くさい男」、国内男子ツアーきっての律義な男がプロ18年目で、ようやく初Vにたどり着いた。今シーズン前のオフにはこんなことがあった。

 今季使用する用具を決めるため、市原が向かったのは一般のゴルフショップ。様々なメーカーのボール、さらには「(インターネットで)ポチった」ものを含め、アイアン3セットを購入した。

 各社のツアー担当者に声をかければ、クラブやボールのテストはいくらでもできるが、自腹でのテストで納得した後に、各社に契約や用具提供を求めたという。市原は「自分で買ったほうが忖度なく判断できる。そのうえで、お願いしたほうがメーカーも気持ちよく協力してくれる」と何とも律義な意図を明かした。

 高校時代は「日本ジュニア」を制するなど、世代のトップを走っていたが、プロ転向後は苦しんだ。パターのイップスや腰のヘルニア、昨季は2度目のシード落ちを経験するなど、「苦労人」という言葉がピッタリくる経歴だ。それでも「アジアツアーに行ったり、メジャー(『全英オープン』)に2度出させてもらったり、普通のプレーヤーより、いろんな経験をして、ゴルフを楽しんでいる」と前向きにプロ人生を振り返る。

 いら立ちや緊張、プレー中の心の浮き沈みを抑えるため、笑顔でいることを意識している。「怒ることもあるけど、時間は短いですね。次のホールに向かう間に開き直ってる。どんな気持ちでも同じ一打なんで、イライラして打ったらもったいない」。笑う門にようやく福が訪れた。

 この優勝で賞金ランキング2位に浮上し、3度目の「全英オープン」切符も獲得した。市原は「2年前は予選を通って、ロストバゲージもあって、思い出だらけ。ボクにとっては思い入れもあるし、いろんな意味で楽しみです」。大舞台でもスター街道を歩んできた選手とはひと味違うゴルフを見せてくれそうだ。