【イタリア・ミラノ23日(日本時間24日)発】フィギュアスケートの世界選手権・女子フリーで、樋口新葉(17=日本橋女学館高)がノーミスの演技で145.01点をマーク、合計210.90点とし、ショートプログラム(SP)8位からの大逆転で銀メダルを獲得した。平昌五輪の代表落ちを経験した次世代のエース候補が大きく飛躍。銅メダルの宮原知子(19=関大)とともに表彰台に立った。優勝はSP4位のケイトリン・オズモンド(22=カナダ)で223.23点だった。

 最終グループのひとつ前、第3グループ最終滑走の樋口が完璧な演技を披露した。冒頭の3回転サルコーを決めると、3回転ルッツ―3回転トーループの連続ジャンプもクリーンに着氷。演技後半に組み込んだ4つのジャンプも一つひとつ丁寧に成功させた。

 演技を終えると両手を上げてガッツポーズ。口元は明らかに「ヤッター」と動いていた。暫定首位となる得点が出ると、こらえていた涙があふれ出す。これまでの悔しさが詰まった涙だった。

 平昌五輪の枠取りがかかった昨年の世界選手権は宮原がケガで欠場。初出場の樋口らに大きな期待がかかった。そんななかSPで9位と出遅れるとフリーではさらに失速し11位。日本は3枠確保に失敗した。誰か一人の責任ではないが、樋口はその重みを痛感していた。

 今回は宮原と2人で出場し、順位の合計は「5」。条件の「13」以内をクリアし3枠を奪回。樋口は「本当に良かったです」と安堵の表情を浮かべた。日本女子の世界大会ダブル表彰台は、安藤美姫が初優勝し、浅田真央が2位に入った2007年以来11年ぶり。

 2枠となった平昌五輪の代表はあと一歩で逃した。宮原とともにグランプリ(GP)ファイナル進出を果たし、五輪代表の有力候補として昨年末の全日本選手権に臨んだ。

 しかし、結果は4位。全日本2位の坂本花織(17=シスメックス)が平昌五輪に出場し、樋口は世界選手権と大舞台の切符を分け合った。「気持ちの切り替えが大変だったが、あの全日本があったからやりきれたと思う」

 今大会もSPでは転倒もあり、8位の出遅れ。「すべてを出し切る気持ちが強かった。今日こそは完璧な演技を目標にしていました」。言葉通りの完璧な演技で会場の大歓声を浴びた。

 樋口とは対照的に上位陣はフリーで転倒が相次いだ。大本命と見られていた平昌五輪の金メダリストでSP2位のアリーナ・ザギトワ(15=ロシア)はジャンプで3度転倒。SP1位の地元カロリーナ・コストナー(31=イタリア)も転倒があった。

 銅メダルの宮原もジャンプで転倒し「まさかの銅メダル。結果はうれしいけど、今日の演技はしっかり心に留めて頑張りたい」とうれしさと反省が入り交じった言葉を残した。

 3枠確保となった来年の世界選手権は日本(埼玉)での開催。再び厳しい代表争いをくぐり抜けなければならないが、樋口にも、宮原にも日本で表彰台のさらに上を目指すチャンスがある。

「五輪には出られなかったけど、世界選手権に出られて、この経験は来年につながると思う。無駄にせずにやっていきたい」(樋口)。誰もが認める潜在能力とは裏腹に大舞台では結果を残せていなかった樋口に自信という大きな武器が加わったようだ。

【プロフィル】
 ひぐち・わかば 2001年1月2日生まれ。東京都出身。3歳で競技を始め、ジュニア時代の14年に全日本選手権で3位に入り、浅田真央らに続く中学生の快挙として脚光を浴びる。15年、16年の世界ジュニア3位。この両年は全日本選手権で2位に。16年秋からのシーズンでシニア入り。2年目の今季は17年9月にイタリアのロンバルディア杯で自己最高の217・63点をマーク。中国杯2位などでGPファイナルにも初進出(6位)。18年2月にはオランダ・ハーグの国際大会で優勝した。身長152センチ。

 みやはら・さとこ 1998年3月26日生まれ。京都府出身。4歳でスケートを始める。2012年にジュニアGPシリーズ米国大会で優勝し、シニアの全日本選手権では3位に入り初の表彰台。全日本は14年から4連覇。15年に中国・上海での世界選手権で銀メダルを獲得。GPファイナルも15年、16年と2位。五輪初出場の平昌五輪では222・38点を記録したが4位だった。身長151センチ。