【フィギュア男子】絶対王者・羽生結弦が金メダルで「救った人たち」

2018年02月19日 16時30分

金メダルを手に笑顔の羽生

【韓国・江陵18日発】王者はやはり王者だった。平昌五輪のフィギュアスケート男子フリー(17日)で、羽生結弦(23=ANA)が圧巻の演技で66年ぶりの五輪連覇を果たした姿は日本中に感動を与えた。一夜明けた18日には、次なるステップにクアドラプルアクセル(4回転半ジャンプ)習得を表明。連覇に続く新たな夢も日本中を熱狂させるのは確実だが、今回の金メダルに胸をなで下ろしているのはファンだけではない。どん底から這い上がった絶対王者が「救った人たち」とは――。

「夢はかなったという気持ちはありますし、やるべきことはやれた実感はある。ただ、やりたいことは残っている」。金メダルを手に臨んだ会見の席で、羽生が次なる目標を口にした。“人類未到”の4回転半ジャンプだ。

「アクセルジャンプを得意として大好きでいられることに感謝しながら、4回転アクセルを目指したい」。1978年の世界選手権でバーン・テイラー(カナダ)が初めてトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させてから40年。フィギュアスケートを新たな高みに押し上げる。

 もちろんその前に、昨年11月に負傷した右足首を完璧な状態に戻す必要がある。今大会でも痛み止めを服用してリンクに上がっていた。「注射が打てれば良かったんですけど、打てないような部位。痛み止めを飲んで、飲んでっていう感じだった」

 3月にはまたも連覇がかかる世界選手権(イタリア)が控えるが「ちょっと治療の期間が必要だなと思っている」と欠場を示唆。ブライアン・オーサー・コーチ(56)も「出場できることを願うが、終わったばかりでまだ分からない。他に話せることはない」とした。

 ケガを乗り越えての五輪連覇に日本中、いや世界中が感動する一方で、ホッと胸をなで下ろしたのは、結論ありき、“羽生ありき”の代表選考を行った一部の日本スケート連盟幹部だろう。

 昨年12月上旬、グランプリ(GP)ファイナルの会場では小林芳子強化部長(62)が選考基準を一部メディアに誤って説明。その日のうちに報道各社に訂正メールが送られる“事件”が起きた。代表発表まで約2週間の段階で、強化部長が選考基準を理解していないことを露呈した格好となった。

 代表選考会を兼ねて行われた昨年末の全日本選手権の時点でも状況は同じだった。選考基準にはケガなどで全日本を欠場した選手について「大会時の状態を見通しつつ、選考することがある」と記載されている。

 対象者はもちろん羽生。本紙は伊東秀仁フィギュア委員長(56)に羽生自身の判断がそのまま連盟の見通しになるのか、医師を派遣するなどして連盟が独自に見通しを立てるのかなどを尋ねようとした。

 しかし「見通し」という言葉が出た途端、伊東委員長は質問をさえぎり「そんなことは書いてないって。もう一回、選考基準を読んできてよ」。会場の玄関から車に乗り込むまで「書いてない」の一点張りだった。

 仮に代表の顔触れが同じだったとしても、結論ありきで選考基準をすり合わせるのと、選考基準に基づいて選ぶのは大きな違い。もしも、羽生が五輪に間に合わなかったら、強行出場でケガを悪化させる最悪の事態が起きていたら…。前回のソチ五輪では連盟が用意した合宿地のリンクの不備が批判されたが、今回は選考のあり方が問題になっていたはず。羽生の復活劇でそんな不手際もすべて水に流れたとはいえ、4年後に向けて“問題”は残ったままになっている。

 引退後について羽生は「世界中を回ってスケートで本気で1位を目指している人に何か手助けをしたい」。世界が注目する絶対王者には役不足かもしれないが、連盟内で手腕を発揮するのも、日本の後進のためには良さそうだ。