【スピードスケート女子】金メダル・小平奈緒「イヤホンの秘密」と「今後の夢」

2018年02月20日 11時00分

小平のレース直前の必需品・イヤホンは無音だった

【韓国・江陵発】金メダルラッシュだ! 平昌五輪のスピードスケート女子500メートルで小平奈緒(31=相沢病院)が18日、五輪新の36秒94で優勝。フィギュアスケート男子の羽生結弦(23=ANA)に続き、日本に連日の金メダルをもたらした。極限の集中力と、恩師と育んだ独特の感覚が生んだ会心のレース。小平が試行錯誤の末に手にした感覚は将来、次代を担うスケーターたちに伝えられる。スピードスケートの日本女子で初の快挙を成し遂げた無敵女王の「秘話」と今後の「夢」を緊急公開――。

 夢に見た金メダリストとして見る景色は想像と違っていた。「実際に見た景色は涙でかすんで、ほとんど皆さんの顔も見えなかった」。ストイックに追い求めた男子の滑り、究極の滑りが五輪という大舞台で結実した。サングラスはこれまで使用していた特徴的なオレンジと黄色ではなく黒一色。試合用にかけ直すのを忘れるほど、レース前から集中力は高まっていた。スタートは「体が動き気味のまま出されてしまった」と完璧ではなかった。しかも、同走のカロリナ・エルバノバ(25=チェコ)が小平の想定を上回る好スタート。「あれっ、私遅いかなと思ったんですけど、スケートが体の真下に入ってくる感覚がすごく良くて、そこに任せれば、私らしいスケートができると思った」(小平)

 焦らなければ、あとは体が覚えている。100メートルを10秒26で通過するとコーナー、ストレートと磨き上げた技術を駆使して一気に駆け抜けた。タイムは目標の一つだった低地での36秒台。五輪2連覇中だったライバル、李相花(28=韓国)が前回のソチで出した五輪記録37秒28を塗り替えた。

 小平が集中力を高めるためのアイテムの一つが、レース前につけているイヤホンだ。「話しかけないでくださいオーラを出してるだけなんですけど(笑い)」(小平)と、実は数年前から音楽などは流していない。

 理由はも他にもある。「試合前にコーチにかけてもらう言葉って、結構大事だったりして、自分が音楽を聴いているせいで、それを聞き逃してしまうのはもったいないと思って」。信州大学入学時から師事する結城匡啓コーチ(52)だけが、小平が出す“話しかけないでオーラ”を無視できる存在だ。

 師弟の間にあるのは、他人には理解できない感覚の世界。そこでどんな言葉が交わされているかを、小平は決して明かそうとしない。第三者が入ることで、感覚が狂うことを恐れていると同時にもっと大きな意味がある。「結城先生との間にある“感覚言葉”みたいなものが、置き換えられて伝わると、子供たちが誤解したまま取り組んでしまうかもしれない。それは一番望んでいないこと。私が将来、直接伝えられたらと思っています」(小平)

 スケートを極めると同時に小平が目指したのは、学校の先生になることだ。「できるかどうかは分かりませんけど」と、現在もその思いは持ち続けている。子供たちのことを真っ先に考えるのは、そんな夢があるからこそだ。

 以前から平昌五輪を「通過点として駆け抜けたい」としており、ここでつかんだ金メダルはスピードスケート人生のゴールではない。小平の感覚が次の世代に伝えられるのはもう少し先のことになりそうだ。

☆こだいら・なお=1986年5月26日生まれ。長野県出身。長野・伊那西高、信州大出。スピードスケート女子500メートルの日本記録、同1000メートルの世界記録保持者。2010年バンクーバー五輪の団体追い抜き銀メダル。今大会は1500メートル6位、1000メートル銀メダル。得意の500メートルは昨季から国内外で無敗。今季、W杯通算優勝回数を日本女子最多の19まで伸ばした。165センチ、60キロ。