【フィギュア男子SP】羽生魅せた新伝説 どや!これぞ超人メンタル

2018年02月17日 11時30分

圧巻の演技を披露した羽生

【韓国・江陵16日発】世界中が驚嘆した。平昌五輪のフィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)、右足首の負傷による欠場からぶっつけ本番で臨んだ羽生結弦(23=ANA)が圧巻の演技で自身の歴代最高得点(112・72点)に迫る111・68点を出し、首位に立った。出場さえ危ぶまれる状態から奇跡の復活劇の裏にあったのは、超人的なメンタルの強さ。フリー(17日)の結果にかかわらず、平昌で新たな「羽生伝説」が生まれたことは間違いない。

 見ていたすべての人にすごさを見せつけた前回王者は、自身最高ともいえる“ドヤ顔”で演技を終えると、小さな声で「ただいま」とつぶやいた。

 短時間で立て直した冒頭の4回転サルコーに、満点の加点をもらった後半のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)、4回転―3回転のトーループの連続ジャンプとすべてがクリーンな着氷。最後のスピンこそやや乱れたが、まるでウイニングランのように優雅なクライマックスだった。「満足という気持ちが一番。自分自身、疑問に思うエレメンツ(要素)はありませんでした」(羽生)

 昨年11月のNHK杯の公式練習で4回転ルッツに挑んで転倒。右足首の靱帯を損傷し、腱と骨に炎症も見つかった。出場さえも危ぶまれた中で、予想をはるかに超えたパフォーマンス。そんな状況で、羽生の口からは「幸いにもケガをして…」と信じられない言葉が飛び出した。

 66年ぶりの五輪連覇に向け、最大の障壁となった負傷を「幸い」と表現。さらに「試合に出られなかったこともあって、今回は非常にスケートが楽しくて、皆さんが応援してくれることも如実に感じることができたのでSPを無事滑れたのかなと思っています」と続けた。厳しい条件であるはずのぶっつけ本番も、まるでプラス材料と言わんばかり。久々だったからこそノーミスの演技だった、という自己分析だ。

 13日の会見で話した「氷に乗れなかった期間も無駄ではなかった」という言葉の意味も一部解説した。

「論文やネットの記事を読んで筋肉解剖やトレーニングの仕方、そのプランニングを勉強しました」。そうした学びが、朝の練習では決して完璧ではなかった4回転サルコーの修正に生かされたという。

 多くの選手たちにとって、今大会の最大の悩みと言っていいのが、フィギュアとしては珍しい午前中の競技開始という日程。だがこれもポジティブにとらえる。

「せっかく早く終わったので、しっかり明日に向けて調整したい。今日できることはご飯をいっぱい食べて、しっかり寝て明日に備えること」

 もちろん、苦しい思いもしてきたはず。それでも、超のつくプラス思考がケガを乗り越えられた要因の一つであることは間違いない。

 1並びの111点台をマークしたことで、キスアンドクライでは人さし指でつくった「1」のポーズを3回続けた。演技後には「僕は五輪を知っている」という自信に満ちあふれた言葉も出た。19歳で五輪を制したことは、他の選手を圧倒するのに十分すぎる経験。ブライアン・オーサー・コーチ(56)と練った戦略も含め、五輪の“勝ち方”は体が覚えている。

 前回のソチ五輪ではフリーで転倒などのミスを連発。金メダルを獲得しても満足できなかった。「ソチのフリーのリベンジがしたい。そのために4年間頑張ってきた」。真の復活を目指す絶対王者の歩みが止まることはない。