【韓国・江陵12日発】日本フィギュア界の“最後のとりで”は、希望の光となるのか。この日まで行われたフィギュアスケート団体で日本は5位に終わり、メダル獲得はならず。この日は上位5か国による男子、女子、アイスダンスのフリーが行われたが、いずれも5位で世界との差を見せつけられた。個人戦での厳しい戦いを予感させる中、ソチ五輪からの連覇を狙う羽生結弦(23=ANA)が公式練習に登場。逆襲ムードを漂わせた。

 ついに羽生がベールを脱いだ。11月のグランプリ(GP)シリーズNHK杯直前の練習で右足首を負傷。その後の大会をすべて欠場し、カナダ・トロントでリハビリと練習を重ねてきた。厳重警備の中、前日11日に韓国入りした際には「2連覇したいと思っている」と発言。男子66年ぶりの連覇に向けて強い決意を見せていた。

 羽生は午後7時5分から男子の公式練習(会場地下にあるサブリンク)に参加。選手は田中刑事(23=倉敷芸術科学大大学院)と外国人選手1人の計3人。詰め掛けたメディアは海外を含め、テレビカメラ30台、記者約200人で、練習用リンクとしては異例の数だった。午後7時からのNHK「ニュース7」もトップニュースで速報。羽生の動きを追い続ける異例の態勢をとった。

 リンクに入った羽生は最初の5分間、笑顔を見せながらバックやターンを絡め、リンクを周回。ブライアン・オーサー・コーチ(56)と軽く会話した後に上着を脱いで本格的に動きだした。

 初ジャンプは1回転トーループ。その後、2回転トーループを跳び、1回転のループ、ルッツ、トーループを数回跳んだ。そして、練習開始から14分後、勢いをつけてトリプルアクセル。着氷のバランスはわずかに崩れたが成功した。

 その1分後、時間を大幅に残して練習終了。リンクを出るとそのままミックスゾーンへ向かい、歩きながら報道陣に「お疲れさまです。明日お願いします」とだけ話し、会場を後にした。

 この日の動きを見る限りではどこまで復調しているかは不透明だが、負傷直後はまったくリンクにも立てないという情報があったことを考えれば、トリプルアクセルの動きは不安を打ち消すには十分なもの。復権に向けて、五輪王者の準備は整いつつある。