【韓国・江陵19日発】それでも勝てる。来年の平昌五輪のテスト大会を兼ねたフィギュアスケート・四大陸選手権の男子で、ショートプログラム(SP)3位の羽生結弦(22=ANA)はフリーで今季最高の206・67点をマークしたものの、SP首位のネーサン・チェン(17=米国)には届かず、合計303・71点で2位だった。次々と4回転ジャンプを成功させる新星に屈する結果となったが、王者としての自信は全く揺らいでいない。果たしてその根拠とは――。

 今大会、羽生はSP、フリーとも4回転サルコーが抜けて2回転となるミスがあった。これが勝敗を分けた最大の要因。チェンとの合計点の差は4点弱でどちらか一方でも成功させていれば、順位が入れ替わっていた可能性が高い。

 羽生にとってサルコーは得意のジャンプ。「(ミスの原因は)メンタルです。練習ではトーループよりも成功率は高いし、自分では成功したときの完成度も高いと思っている。それを試合で出せるように練習したい」。十分に克服可能と捉えているだけに「危機感はない。自分の演技をすれば勝てる」という言葉にも力がこもる。

 両者の差はフリーでの4回転の本数にある。羽生の4本に対し、チェンは5本。しかも、チェンは着氷の乱れがありながら、すべて成功させてきた。これについては羽生も「転倒や抜けが一つもなくやり切ったことは尊敬に値する」と称賛。その一方で、自らも4回転5本への挑戦に手応えをつかんでいる。

 今回のフリーで羽生はサルコーのミスをカバーするため、演技中にジャンプの構成を変更。「体力的にも余裕があると思った」ことで、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)からの連続ジャンプを4回転トーループからの連続ジャンプに切り替えてみせた。

 2回転になったサルコーを含めると、4回転にトライした回数はこれで「5」だ。「5本の構成もできるかなという手応えは感じました」と今後のプログラム変更の可能性を示唆した。

 フィギュア解説者の杉田秀男氏(82)は「ネーサンのジャンプは確かにすごいが、前半で点数を稼いで後半はややバランスを欠いた印象。羽生は無駄のないスケーティングをしているから、後半も攻められるだけの体力が残っている。試合の結果は別にして、改めて現在の第一人者であることを示した」と2人の対決を総括。“負けてなお強し”と分析する。

 さらに羽生は1年後にこの場所で“自分の演技”ができる感触も得た。フィギュアの試合は夜に行われるのが基本だが、平昌五輪では午前中に競技開始。今大会の男子フリーはそれに合わせ、午前11時のスタートだった。一日のスケジュールが大きく変わってくる中、羽生は「公式練習から6分間練習の間が短くて、感覚が研ぎ澄まされていた」と振り返り、調整にも自信をのぞかせた。

 まずは1か月後に迫った世界選手権(3月29日~4月2日、フィンランド・ヘルシンキ)が目標。今度は実力通りの結果で、本番の平昌五輪でも金メダルの大本命であることを証明する。